アマゾンジャパン社長「静岡は重要市場」 県内に55億円以上投資、配送拠点整備で顧客満足度高める
EC(電子商取引)サイト「Amazon.com」の日本法人アマゾンジャパン(東京都)のジャスパー・チャン社長が21日までに静岡新聞社の取材に応じ、2020~23年に配送拠点整備などで県内に累計55億円以上の投資を行ったと明らかにした。静岡県を重要市場と言及し、利用者の「ベストな買い物体験創出」に向け、今後も利便性向上や販売事業者のビジネス推進を目的とした投資を重ね、地域経済の発展を支援する方針を示した。 同社は23年、三島市に県内初の配送拠点「デリバリーステーション(DS)」を開設。24年は浜松、袋井、静岡の各市にもDSを整備し、商品購入者に翌日配送が可能な環境構築を進めた。チャン社長は「迅速な配達を実現することが顧客満足度を上げる」と語る。 EC隆盛の一方、懸念されるドライバー不足は「一企業の努力だけで解決できない」と前置きした上で、「運転手の負担を軽減する効率的な配送方法が重要」と指摘。置き配やアマゾンロッカーなど再配達を減らす取り組みに注力していると説いた。 同社ECを活用する販売事業者からは商機拡大に手応えを感じるとの声も。靴製造小売のAKAISHI(静岡市駿河区)は、商品の受注、梱包(こんぽう)、発送などをアマゾンが一括で請け負うサービスなども有効に利用して19年の販売開始以来、同ECでの売り上げが約6倍に伸長した。赤石恒一社長(43)は「自社ECと顧客が重複せず、新たな商圏が開拓できる」と効果を実感する。23年からは英語圏に向けたアマゾンの越境ECも始め、さらなる販路拡大を図っている。チャン社長は「県内では23年時点で約3千社が当社ECを利用している。多様な業種がある静岡で、新たな商機を探るサポートや起業支援を強化していきたい」と展望した。 ■EC活用で生産性向上 売り上げ増や労働時間減少 県内中小企業 電子商取引(EC)を活用する県内中小企業は生産性が高い―。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(東京都)が8月に全国10万人を対象に実施した「EC普及が企業と消費者にもたらす経済的影響」調査によると、過去10年以内にECを開始した県内企業は、開始後に年間売り上げが平均約1・6%伸びている。 企業規模別で増加率を比べると、中小企業が2・3%増に対し、従業員100人以上の企業は1・1%増と、中小の方がEC販売の恩恵を受けやすいことがうかがえる。またEC開始3年以内の労働時間は1カ月当たり2・4時間減少し、全国平均の同1・3時間減少を上回った。 調査を担当した田中辰雄主幹研究員は「EC活用は売り上げ伸長と労働時間減少に寄与し、生産性向上による事業成長を遂げている」と分析する。
静岡新聞社