【名古屋市長選】年5000円の“市民税減税”の是非を問う 15年続けた政策なのに…市は「効果の検証はしていない」
名古屋市長選で争点の一つになっている“市民税の減税”。河村前市長が2010年に開始した、この政策。モデルケースでは年5000円の減税となり、2023年度の減税額は96億円にのぼりました。投開票日が迫った名古屋市長選。減税政策について、各候補はどのように訴えているのでしょうか。
どうなる“市民税減税” 市民は効果を実感しているか?
2010年から名古屋市で行われている市民税減税について、モデルケースで詳しく見ていきましょう。 子ども2人の4人家族で、世帯年収が500万円の場合、年間の減税額は5000円となりますが、世帯年収が1000万円の場合は、年間の減税額は1万6200円に。所得が高いほど減税額が大きくなる仕組みです。 この減税政策は、消費を増やして経済を活性化し、最終的には税収を増やすことを目指して行われてきました。 この市民税減税について、市民はどう思っているのか街で話を聞いてみると、「助かりましたよ。手取りが増えているからね」「大きいと思いますよ。みんな活気づくんじゃないですか」という声が。 一方で、「(5000円は)1回の買い物で全部消えちゃう。ちょっと少ないかなっていう感じです」「もうちょっと減税してもらわないと。せめて物価上昇分と同じになるくらい」という意見もあり、実感がある人ない人、さまざまなようです。
減税しても税収が増えるわけではない…?
経済を活性化するために行われたという市民税減税政策。その効果について名古屋市に聞いてみましたが、なんと答えは「名古屋市としては効果の検証はしていない」というものでした。15年にわたり続けてきた政策にもかかわらず、検証したことがないとは驚きです。 実際の税収はどうなっているのでしょうか。名古屋市の市税収入の伸び率は、2009年度比で見ると25%増となってはいますが、全国で見ると、さらに伸び率が高い政令指定都市もあります。そして、25%のうちどれくらいが減税効果なのかはわかりません。
減税が税収に与える影響について、地域経済を専門とする名古屋学院大学の江口教授に聞いてみましたが、減税すれば必ず税収が増えるわけではないようです。 名古屋学院大学 江口忍教授: 「減税した分をすべて消費するわけではないため、一般的に減税は税収増にはつながりにくい。ただし、減税して市の魅力が上がり、移住者が増えるなどで、税収が増える可能性はある」 2023年度は96億円分が減税され、その効果で手取りが増えるなど、現在は納税者全員に“広く薄く”還元されています。 もし仮に減税をやめた場合、この96億円分を市民サービスに充てることができます。例えば、小学校の給食費無償化には60億円必要ですが、それも実現可能に。一方で、恩恵を受けられる人が限定的になってしまうという問題点もあります。