驚きの共有空間「ピーススタジアム」を通して専門家が読み解く、長崎スタジアムシティの全貌
「なんだこりゃ……」夜10時のスタジアム、ちょっとしたスタジアムナイトツアーです。興奮して歩いていると今度は観客席に普通に人が座っています。カップルやおじさん、まばらに間を空けながら暗がりのグラウンドを眺めて座っています。私もふらりとスタンドに下りて観客席に腰掛けます。結局そのまま1時間弱、グラウンドを眺めながらボーっとしてしまいました。 ピーススタジアムは試合が開催されない日常利用時、コンコースどころか観客席まで開放した施設として運営されています。しかもサッカー興行時には指定席になるソファーシートやテーブルシート、カウンターシートなども自由に座れる完全開放型スタジアムとなっています。その開放時間は朝7時から夜11時、まさにセブン~イレブンでアクセスできるこれまでにないスタジアムとなっています。
現地を訪れると事前に資料で見ていた印象がまったく変わります。開放時間や上層スタンドへの制限はあるものの、スタジアムにいつでも入れてどこでも行ける。スタジアムを自分の居場所にできることがこんなに心地いいこととは思いませんでした。スタジアムがシンプルか? シンボリックか? なんてことは無意味に思えてきます。
多機能複合化のレベルが変化する? 運営と建築が一体となった存在
この明け透けなスタジアム利用もサッカーの試合がはじまると様相が変わります。余裕をもってつくられた広いコンコースにはチケットチェックや荷物確認用の仮設テントが設けられ、開放的な施設が一時的に区切られます。上層の観客席スタンド全体と3階コンコース、そして2階コンコースのメインスタンド側、両ゴール裏のエンドスタンド側がサッカースタジアムとして占有されます。
このことで普段自由に行き来できる2階コンコースはホーム側とアウェイ側に分かれてしまいますが、唯一占有されていなかったバックスタンド裏2階コンコース部分「フードホール」が分かれた南北のエリアをつなぐ唯一の屋内自由通路として機能し、ピーススタジアムの飲食物販サービスを大幅に補います。 この際、普段はオフィスとして使用されているスタジアムシティノース(以下オフィス棟)はフラッグシップストアとなり、商業施設であるスタジアムシティサウス(以下商業棟)は地元スーパーが入った飲食物販施設となります。仮設のプラ柵を置くだけで、フードホール+オフィス棟+商業棟が一体となった複合飲食物販施設が出現し、まるで海外スタジアムのテールゲート施設のようにスタジアムに入る前から来場者を迎え入れ、賑わいをつくります。