定年後は「嘱託社員」として働き続ける予定ですが、働いていると年金が「支給停止」になると聞きました。年金は繰り下げしたほうがいいですか?
繰り下げしても増えない人がいる
年金の繰り下げは、原則として65歳時点の老齢厚生年金額を基準として計算されます。前段の在職老齢年金制度によって支給停止した分があると、繰り下げしても増えていないと感じる人もいます。 なぜなら支給停止している年金は、繰り下げしたとしても繰り下げの対象とならない(増えない)からです。国民年金部分である老齢基礎年金は支給停止の対象外なので、仮に70歳までの5年間(60月)を繰り下げした場合、42%増額した年金を受け取ることができます。 厚生年金保険部分である老齢厚生年金(報酬比例額)は、支給停止された金額は増額しないので、仮に65歳の年金見込み額が150万円だったとして、100万円が支給停止され続けた場合、50万円の42%増額になるので、繰り下げしても増えた感が少ないです。
家族構成によって繰り下げするか判断する
Aさんの家族構成によって、繰り下げがお得なのか判断するのも選択肢です。Aさんが厚生年金保険に長く(20年以上、240月)加入して、配偶者が年下(受給権発生時に厚生年金保険加入期間が20年未満)である場合、家族手当として、Aさんの厚生年金保険に加給年金が年額約40万円受け取ることができます。 歳の差が大きいと受け取る期間が長いので、厚生年金保険は繰り下げせずに受けとるという選択肢もあります。 ただし、給与が高く、原則、厚生年金保険の報酬比例部分が全額停止になると、加給年金も受け取ることができないため、注意が必要です。繰り下げは、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方もしくは一方だけでもできます。家族構成等で繰り下げすることを検討してみましょう。
老齢年金は課税対象になるので、税金や保険料があがる可能性も
老齢年金は原則、課税の対象となります。例えば、65歳未満は108万円以上、65歳以上は158万円以上で所得税の課税対象です。繰り下げしたことにより、年金額が増えると税金や保険料が高くなる可能性があります。不安を感じているのであれば、一度専門家に相談、もしくは行政等に確認してみてから繰り下げを検討してはいかがでしょうか。 執筆者:三藤桂子 社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士
ファイナンシャルフィールド編集部