石破首相、政権維持へ譲歩連発 補正通過、維新も取り込み 参院選にらみ野党切り崩し〔深層探訪〕
2024年度補正予算案が衆院を通過し、17日にも成立する見通しとなった。少数与党の石破政権は「部分連合」相手の国民民主党に加え、日本維新の会からも賛同を得ようと譲歩を連発。来年1月召集の通常国会での連携を模索するとともに、夏の参院選をにらみ野党結集にくさびを打つ狙いもありそうだ。ただ、政治資金規正法再改正を巡る溝は埋まっておらず、場当たりに近い手法が今後も通用するかは見通せない。 【図解】13兆9433億円、補正予算案の概要 ◇前原氏「豹変」 「この問題で多くの党と議論することは極めて大事だ」。石破茂首相は12日の衆院予算委員会で、維新の看板政策である教育無償化に向け、与党が維新との協議に応じる意義を強調した。 自民、公明、維新3党の政調会長がこの日午前に会談し、教育政策に関する協議入りで合意。維新の前原誠司共同代表は、国民民主に追随するように「補正予算案に賛成する」と表明した。 自公両党は前日、来年からの「年収103万円の壁」見直しを受け入れ、国民民主から補正成立への協力を取り付けた。同時に、維新にも水面下で政策協議を持ち掛け、立憲民主党が求めた能登地方の復興費増額のための予算案修正にも応じた。自民幹部は、通常国会での25年度予算審議を見据え「関係を構築したかった」と語った。 「政策実現」で存在感を発揮したい野党側の思惑もにじんだ。前原氏は昨年まで所属した国民民主の与党寄り路線に反発し、党を離れた経緯がある。ところが12日の記者会見では「国民民主の立ち位置は参考になると思っていた」と豹変(ひょうへん)。国民民主の若手は「前原氏は成果が欲しくて焦ったのだろう」とみた。 ◇企業献金は平行線 「言いっ放し、聞きっ放しではない。お互いに議論するという意味での熟議になったと思う」。首相は衆院通過を受け、首相官邸で記者団にこう誇った。しかし、周囲には「予算や法案さえ通ればいい」とも漏らした。国会会期末が21日に迫る中、政権の野党取り込みは慌ただしく進んだのが実態だ。 政権維持を目指す自民にとって、参院選での野党候補一本化は阻止したいのが本音だ。実際、補正への賛否で野党側の対応は分かれ、自民重鎮は「揺り戻しが起こった」と切り崩し成功にほくそ笑んだ。「額ありき」と批判された補正予算案の妥当性に衆院で審議が尽くされたとは言い難い。 後半国会の焦点は規正法再改正の成否に移る。各党が提出した計9法案は、12日の衆院政治改革特別委員会で実質審議がスタート。立民、維新、共産党などが企業・団体献金の禁止を、自民は存続をそれぞれ訴え、平行線だった。自民の小泉進次郎・政治改革本部事務局長は、今回の政治改革の契機となった派閥裏金事件について「企業・団体献金自体が問題だったわけではない」と言い放った。 石破政権は会期を延長せずに規正法改正案を成立させたい考えで、ここでも国民民主がキャスチングボートを握るとみられる。同党と公明が共同提出した第三者機関設置法案について、公明幹部は「自民が修正協議でのむ方向だ」との見通しを示した。 ただ企業・団体献金には世論の反対が根強い。公明と国民民主が安易に自民に助け船を出せば「しっぺ返し」を受けかねない。立民の大串博志代表代行は特別委で、企業・団体献金禁止について「今国会中(の実現)は無理でも、めどをきちんと付けるべきだ」とくぎを刺した。