トランプ氏指名のウクライナ特使による終戦計画、プーチン氏を喜ばせる可能性
前線を凍結
計画では停戦により前線を凍結し、非武装地帯を設置する。これに合意する見返りとして、ロシアには限定的な制裁の緩和を認める。全面緩和はウクライナにとって望ましい和平協定への署名が行われる場合にのみ実現する。ロシアのエネルギー輸出にかかる課徴金はウクライナの復興のために支払われる。ウクライナは占領された領土の返還要求を断念するよう求められはしないものの、返還は外交のみによって追求することで合意する。領土返還には「将来的な外交上の突破口が必要であり、恐らくそれはプーチン氏が大統領職を退くまで起こらない」という点をウクライナは受け入れるとしている。 魅力的なまでにシンプルで、敏速なアプローチだと言える。しかしそこにはロシア政府の今後の要求や、過去に用いてきた外交プロセスへの適応が欠けている。それは周囲を顧みることなく軍事侵攻を追求する、ロシアの姿勢に他ならない。前線の凍結は、そこに至るまでの数カ月間に非常な暴力を引き起こすだろう。ロシア政府は可能な限りの領土を奪おうとするからだ。クレムリン(ロシア大統領府)は過去に停戦を無視し、その領土的目標を果たそうとしたことがある。自分たちはしばしば平気でそれを否定するが。 非武装地帯では治安の維持が必要になる公算が大きい。ことによるとNATO軍や、他の中立国の兵士を双方の間に配備するのかもしれない。そのような体制を維持し、人員を充てるのは控え目に言っても至難の業だろう。国境線は長大で、何百キロにもわたって伸びている。財政投資も莫大(ばくだい)な規模に上るだろう。 ウクライナを一定程度武装させて現在及び将来のロシアによる前進を阻止するという施策も、同様に厳しいものになる。計画の指摘するところによれば、米国は155ミリ砲弾を月1万4000発生産するが、ウクライナ軍はその数をたった48時間で使い切ってしまうこともある。逆説的ではあるが、ケロッグ氏は米国にもっとウクライナを武装させて欲しいと望みつつ、現実にはそれが不可能だと認めてもいる。