なぜ森保ジャパンは新型コロナ禍での緊急オランダ遠征を決めたのか?
すでに半分を終えた2次予選のグループFを、日本は4戦全勝の首位で折り返している。力関係を考えれば2次予選の首位通過は問題ないが、韓国代表やイラン代表をはじめ、強敵ばかりが集うアジア最終予選がその先に待っている状況を考えれば、これ以上のブランクは避けたかった。 実際に国際親善試合の可能性を模索していく上で、日本国内での開催は現実的ではないとまず判断された。日本政府が定める帰国後の検疫措置が大きな障壁となり、例えばヨーロッパのクラブに所属する選手が招集された場合、帰国翌日から2週間にわたって検疫所に登録した場所で待機しなければいけない。対戦国として入国した海外の代表チームも、同じく検疫措置が取られる対象となる。 となれば、選択肢は日本以外での開催しかない。現状における各国の入国制限や入国後の行動制限、そして新型コロナウイルスの感染状況などを総合的に勘案した結果、日本からの渡航者に2週間の待機などの措置が設けられていないオランダが候補となった。EU(ヨーロッパ連合)圏内の移動に関しても制限がないため、ヨーロッパ各国でプレーする日本人選手の招集に関しても障壁がなくなる。 オランダ政府およびオランダサッカー協会の了承を取りつけながら、対戦国の選定にも着手した。しかし、UEFAネーションズリーグ2020-2021が9月から開催されている関係で、オランダを含めたヨーロッパ各国とのマッチメークはほぼ不可能となっている。カタールワールドカップ予選が開催される可能性がある、南米諸国をオランダに招くことも現実的ではない。
となると、ワールドカップ予選が来年に延期されている、北中米カリブ海やアフリカの強豪国が対象となる。メキシコ代表との対戦も報じられたなかで、最終的にはカメルーン、コートジボワール両代表とのマッチメークに成功した。ともに代表選手のほとんどがヨーロッパのクラブでプレーしているだけに、現状におけるベストメンバーと戦えるメリットも見込める。反町委員長が続ける。 「無理だとサジを投げられても仕方のないところを頑張って、知恵に知恵を絞ってようやくここまでたどり着いた。強化においても、選手たちの状況把握においても、チームのコンセプトを植えつける上でもいい機会になる。有効な活動だったと後から思えるように、何としても成功させたい」 ヨーロッパなどの海外で、第三国との国際親善試合を組むのは初めてではない。最近では2018年3月27日に、ヴァイッド・ハリルホジッチ元監督に率いられた日本がベルギーでウクライナ代表と対戦している。このときはキリンチャレンジカップが初めて海外で開催されたケースにもなった。 ヨーロッパ各国のリーグ戦は国際Aマッチデー期間中に中断されるため、各国協会が選手の拘束力をもつことと合わせて、ヨーロッパ組の招集には問題はない。一方で過密日程を緩和する目的で、今シーズンのJリーグは特例として国際Aマッチデー期間中にもJ1リーグ戦が組まれている。 しかも、森保ジャパンに招集されてオランダへ遠征した場合、入管法に基づく「入国拒否対象地域」に指定されている関係から、帰国翌日から2週間の待機を求められる。代表招集期間と合わせて約1カ月間も離れてしまう状況は、Jクラブ側としても避けたいのが本音となるだろう。 「日本政府の状況から言うと、帰国後すぐにチームに合流できるかと言えばそうではない。しかし、代表チームは当然、その時々のベストの選択をしなければいけない。自主的な待機がなくなるかもしれないし、最高の選択をしてもらえればありがたい」