コミケの即席撮影会に、コスプレ写真家はなぜ集う?撮影会デビューはいかに
「ふだんはスタジオでの撮影が多いですが、2018年はロケの比率も増やしていきたいと思っています。その月にもよりますが、平均すると月2回ほどコスプレの作品撮りを行っています」というから、やはり見立てどおり本格的なコスプレ写真家だ。
なぜ、撮影環境があまり良くないコミケで、わざわざ撮影をするのだろうか。けもしさんは「コミケでしか出会えないコスプレをしている人を撮影したいというのが主な目的です。たとえば昔の作品だったり、好きな作品でもコミケでしか会えないレアなコスプレをしてるレイヤーさんを見つけるとテンションが上がります。もちろん、知り合いとの交流も目的ではあります」と説明する。
まだ見ぬすてきなコスプレイヤーとの出会いを求めて
続いて、トラックヤードといわれる展示ホールの間にある通路のようなエリアへ行ってみた。このエリアは三脚とレフ板を使った撮影ができるため、数多くのコスプレ写真家とコスプレイヤーが集まっていた。ここではコスプレイヤーたちに、ポーズや表情など的確な指示を出しながら撮影していた、こめっちさんに声を掛けた。
「よくあるコスプレイベントだと、参加する人がある程度固定してしまっているんです。その点、コミケとなると全国からすてきなコスプレイヤーさんが集まります。ネットでしか見たことがないレイヤーさんを実際に撮影できるチャンスでもあるんです」とこめっちさんはコミケで撮影する理由を語る。コスプレ写真を撮りたいと思ったのは、2009年のゲームショーかワンダーフェスティバルのときだったという。本物のコスプレイヤーを目の当たりにして、持っていたコンパクトデジカメで撮影したのが始まりだ。
作品撮りでは、ほとんどスタジオを利用するという、こめっちさん。今のところ、月1回くらいの頻度だが、スタジオで撮影させてもらえるコスプレイヤーを募集しているという。
コミケでの撮影は難しかった……
2名のコスプレ写真家にコミケでのコスプレ撮影が作品になりうるのか聞いたところ、異口同音に「ここで作品撮りなんて無理ですよ(笑)。せっかくカメラ持っているんだから、撮らせてもらったらどうですか?」と返ってきた。 そこで、筆者もコスプレイヤーさんを撮影させてもらうことに。始めてみると、混雑していて、被写界深度の浅いレンズを使っても背景を整理するのが非常に難しい。
やはり、コミケはコミュニケーションと出会いの場であり、作品として創り上げていくには、ここからスタートなのだと実感した。そして、ここから次の“ガチ”コスプレ写真が新たに生まれていくのだろう。 (取材・文・写真:水澤 敬)