韓国の無人機、北朝鮮へのビラまきは自粛して監視・偵察だけに使おう【寄稿】
第二に、北朝鮮住民の意識の変化という対北政策の目標を達成する上で、ビラ散布よりも効果的な代替手段は多い。ビラにもそれなりの用途があるが、対北放送の波及力には比肩し得ない。北朝鮮でもテレビやラジオは一般化しており、携帯電話の普及率も30%に達しているだけに、対北情報流入の手段も情報化時代に合わせて高度化、多様化させる必要がある。対北衛星テレビ放送やラジオ放送を強化する案はいくらでもある。 ならば、無人機はいかなる用途で使うべきだろうか? 最善の平時用途は対北監視・偵察だ。韓国軍の無人偵察機が北のあらゆるミサイル基地や発射場を常時監視できてこそ、北朝鮮の核使用を実効的に拒否でき、米国に衛星情報のリアルタイム共有を要求するレバレッジ(てこの作用)になる。 北朝鮮はかなり前から、隠密裏に無人機を対南偵察に活用してきた。星州の米軍THAAD(高高度防衛ミサイル)基地や大統領官邸を偵察したことが確認されてから10年以上が経過しており、2年前にも竜山の飛行禁止区域まで侵入した。韓国国内の一部の無人機サークルも、およそ10年前から北朝鮮地域を撮影しており、2年前の北朝鮮の無人機侵入に対応して韓国軍の無人機も平壌近辺まで侵入したといわれている。 小型無人機を監視・偵察のみに用いる場合、北朝鮮がこれを探知する可能性は薄いが、一方で北朝鮮がこれに対応して無人機による韓国国内の偵察を公々然と行うとしても、韓国側には失うものより得るものの方が多い。1992年にNATO(北大西洋条約機構)とWTO(ワルシャワ条約機構)間で締結された「航空偵察自由化条約(The Open Skies Treaty)」が、2021年に米国とロシアが脱退するまで欧州の平和を維持することに寄与したように、南北間の相互偵察も軍事活動の透明性の底上げを通して武力衝突を防止する上で前向きな役割を果たし得る。ただし、無人機の武装禁止と、空港および原発周辺の飛行禁止区域の順守などを含む南北間の了解は推進する必要があるだろう。 千英宇(チョン・ヨンウ)元大統領府外交安保首席・韓半島未来フォーラム理事長