なぜ就職ランキング上位の人材コンサルは倒産したのか…「消える企業」と「生き残る企業」の決定的違い
■環境変化に対応できる財務体質ではなかった この一連の流れから見れば、世の中的にはリーマンショックによる外部環境の急激な悪化がワイキューブの倒産の原因であったと取れます。しかし、ワイキューブが行った施策を見てみると、そこには倒産してしかるべき理由が存在することがわかります。 リーマンショックは、ワイキューブの経営にとって確かに致命的な打撃となりました。人材ビジネス業界全体が厳しい状況に追い込まれたことは事実ですが、私はこれだけが倒産の原因だとは思いません。なぜなら、リーマンショックの中でも倒産せずに生き残った同業他社も多数いるからです。 また、リーマンショックより甚大な影響を与えたコロナ禍であっても、消えた企業がある一方で、たくましく生き残った企業が多数います。つまり、外部環境の激変は確かに企業の業績に要因を与えますが、それは1つの要因でしかありません。 企業は法人と呼ばれるように、1つの人格を持つ生き物です。生き物である以上、生存し続けるためには、その環境の中で、環境変化に適応しながら生きていく必要があります。私たち哺乳類は、植物連鎖の下位にいた恐竜の時代も、食料が限られていた氷河期も、その環境に対応しながら生き抜いてきました。 ワイキューブは環境変化のせいで倒産したのではなく、環境変化に対応できるだけの財務体質を持っていなかったから倒産したのです。 ■「新たな顧客」はどんどん少なくなっていく 消える企業の共通点① 成長への幻想と不安定なビジネスモデル 安田氏はそれまで新卒採用をしたことがない中小・ベンチャー企業をターゲットに、独自の採用ノウハウを提供し事業を拡大しました。当時はまだ中小企業の新卒採用は一般的ではなく、需要は潜在的でした。そのため、事業を拡大するために、潜在化している新規顧客を獲得しなければなりません。 この戦略は経営においてもっともコストがかかることでもあり、ワイキューブのみならず、多くの企業が直面する課題です。特にベンチャー企業では新規獲得のためのコストが大きな負担となります。 ワイキューブはその斬新な着眼点と革新的なPR手法により潜在的な市場を開拓していきます。しかし、新たな顧客は永遠に存在しません。どんなに優れた商品でも一定程度行き渡れば新規顧客は少なくなっていきます。