<劇場版モノノ怪>中村健治監督×神谷浩史対談(1) 17年ぶり新作の“新生”薬売り 真実にたどり着くため熱く、動く
2007年にフジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」で放送された人気テレビアニメ「モノノ怪」の約17年ぶりの新作となる劇場版「劇場版モノノ怪 唐傘」が、7月26日に公開される。「モノノ怪」は、2006年にノイタミナで放送された「怪~ayakashi~」の一編「化猫」のスタッフが再集結して制作された。薬売りの男がモノノ怪に立ち向かう怪異譚(たん)で、スタイリッシュなキャラクターデザイン、和紙のテクスチャーなどCG処理を組み合わせた斬新な映像が話題となった。約17年がたった今もなお根強いファンを持つ「モノノ怪」の新作の舞台は、情念渦巻く“女の園”大奥だ。「化猫」から同シリーズを手がける中村健治監督、劇場版で薬売りを演じる声優の神谷浩史さんに新作に懸ける思い、収録の裏側を聞いた。 【写真特集】「モノノ怪」17年ぶり新作 新たな熱い薬売り 美しく! 情念渦巻く大奥 圧倒的映像美! ビジュアルを一挙に
◇情念渦巻く大奥を舞台に描く“合成の誤謬”
--大奥を舞台にした理由は?
中村監督 大奥は以前から扱ってみたかった題材だったので、劇場版を作るにあたり、大奥を舞台にしたら面白いんじゃないかと考えていました。企画会議の際に、怪異に巻き込まれてぐったりした女中の中で薬売りがりんと立っているラフ絵を描いて、スタッフに「カッコよくないですか?」と聞いたら、みんなも賛同してくれて。今回、時代考証の方にもいろいろ教えていただいて、僕らが知っている大奥と実際の大奥は随分違うんだということも分かって、すごく良かったなと思っています。
--大奥に新人女中として入ったアサとカメは集団に染まるための儀式として、自分の大切なものを捨てることを強いられます。新作のテーマとしたことは?
中村監督 テーマは「合成の誤謬」。元々は経済用語で、簡単に言うと、個人の正しい行動と、集団にとって都合のいい行動はズレるという話なんです。例えば、景気が悪くなってくると、みんながお金を使わなくなる。でも、そうすると、全体としてはより景気が悪くなる。そういうことが世の中にはたくさんある。そうしたズレから個人の苦しみが起こるし、集団としてうまくいかなくなる。そうしたことをテーマにしました。