沢村玲×別府由来「ハッピー・オブ・ジ・エンド」古厩智之監督が名シーンの裏側明かす
――第8話、駅での別れのシーンについても伺わせてください。走り出した電車に乗る千紘が、駅に残る浩然に対し、車内を逆走して窓から名前を叫び続ける…。今作の予告にも使用された名シーンですが、実はこの流れ、台本には書かれていないんですよね。 「はい。別府くんが本当にいい動きをしてくれました。彼から『窓から顔を出したい。叫びたい』と言ってきてくれたので、それはもうぜひやってよと。そして、あのシーンをよく見ると、実はカメラマンが顔を出すための窓に、一度別府くんが顔を出しかけているんです。でも、感情が高ぶっている時って、何が何だか分からなくなりますよね。なので、全然オーケーといいますか、むしろあれが良かったなと。心と体が同時にワーッと動くすごくエモーショナルなシーンで、僕も大好きです」
――原作ではこのシーンの舞台は神奈川・江ノ島ですが、ドラマで茨城・大洗を選ばれた理由は? 「江ノ島は観光客の方が多く、特に昨今のアニメブームもあって鎌倉高校の周辺は人があふれているので、おそらく撮影は厳しいだろうなと思っていました。江ノ電にも相談に行ったのですが、やはり難しく…。そんな中、大洗は江ノ島とはまた違った情緒があり、太平洋が広大でどこか殺伐としていて、地の果てのような感覚にも陥るなと。それがこのドラマに合っているなと思い、大洗を選びました。近くに水族館があり、イルカ・アシカショーをやっていたのも幸運でしたね(笑)」
――大洗で別れて数年後、浩然は偶然千紘のSNSを発見しますが、最新投稿として表示される「お気に入りの場所」は、最初に千紘が浩然を撮影した公園ですよね。ここに、離れ離れになった後も浩然を愛し続けた千紘の思いが一つ詰まっていたように感じました。 「そうですね。ただ、視聴者の方には気付いてもらえなくてもいいと思っていました。千紘にとっても純粋に大事な場所を紹介したくて投稿しただけで、きっとあの投稿に深い意味はないんじゃないかな」 ――待ち受けるラストは、再会した2人が笑顔で見つめ合う感動のシーンでした。この形にした理由を教えてください。 「原作のラストでは浩然の表情が逆光で見えず、千紘の笑顔で終わりますよね。当初は、ドラマもその形で終わろうと思っていました。でも、原作を最後まで読み終え、あらためて3巻の表紙を見た時に、この浩然の笑顔は千紘が撮影したものだったのだと気付き、ここまでやらなくては、とあの終わり方になりました」 ――心がじわっと温かくなり、誰もが2人の幸せを願いたくなる、最高のラストだったと思います。 「最初の頃の浩然は千紘を手のひらの上で転がしていて、気持ちが通じ合ったかと思いきや『俺一人で行く』と千紘を突き放すように別れ、ずっとどこか擦れ違い続けていたんですよね。でも、最後は2人が本当に真正面から向き合ったことを物理的にも表現したくて。ドラマや映画って、見て分かる、テーマが絵になっているということが大事だと思っていて、それをやれたらいいなと考えていました」