沢村玲×別府由来「ハッピー・オブ・ジ・エンド」古厩智之監督が名シーンの裏側明かす
――撮影では心身ともにつらいシーンが多かったかと思うのですが、現場の雰囲気の和やかさを感じます。 「現場は和やかでしたね。もちろん肉体的には大変でしたし、精神的にキツい場面も多かったのですが、2人とも“僕の作品だ。僕が頑張らなきゃ”という思いがすごく強くて。でも、それは2人だけではなく、僕もそうだし、スタッフ全員が同じ気持ちだったんじゃないかな。みんなが“自分の作品だ”と、自信を持っていたから頑張れたんだと思います。それはまず、全員が原作に魅了されていたことが大きいです」 ――ドラマの雰囲気や色合いなどがアジア映画のようで、SNS上では「千紘が映画好きだから?」などの考察も上がっていました。その意図を教えてください。 「この作品はラブストーリーでありながら、半分くらいはノワール、犯罪ものですよね。小さな部屋を中心に2人の思いが交わる中、恐ろしい他人が出てきて、実はそういう人がすぐ隣にいるのかもしれないと思わされる。さらには加治やマヤ(浅利陽介)、売春婦や犯罪者などさまざまな人が出てきて…原作を読んだ時に、まるで“街の映画”のようだと思ったんです。そして、実は常々そういう感じの作品ができたらいいなと考えていて。なので、このドラマは決まった当初からシネライクにしようとカメラマンと話していました。昔の香港や台湾の雰囲気が好きで、このドラマに関してはウォン・カーウァイ監督の映画『恋する惑星』(1994年)に影響されている部分が大きいです」
――ここからは話題を呼んだシーンについてお伺いさせてください。まず、クライマックスの一つとなった第5話。母のような存在の女性を失いふさぎ込んでいた浩然を、千紘が上野へ連れ出したところから、2人の幸せな時間が描かれました。 「あの日、浩然の中である程度(命を絶つ)心が決まっていたのだろうなっていうのは薄々分かると思うんです。浩然にとっては、最後のハッピーアワーという感じですよね。楽しそうなのに、なぜか見ていて胸がギュッとするような…。本当は上野での夜歩きのシーンをもっと描きかったのですが、ロケの時間的にもどうしてもうまくはまらず、回想シーンを入れることで彼らが長時間歩いたことを演出しています」