沢村玲×別府由来「ハッピー・オブ・ジ・エンド」古厩智之監督が名シーンの裏側明かす
――不忍池のボート上でのキスシーンも美しく印象的でした。ここが今作唯一のキスシーンでもありますよね。 「実は、脚本上ではもう少しキスシーンがあったのですが、途中でふと“キスは大事にしたいな”と思ったんです。というのも、原作と比べるとどうしてもラブシーンが少なくなってしまう分、その純度を高めたいなと。2人にも、『キスを大事にしたい。1回だけにしてもいいかな?』ということを話しました。その後、キスシーンを入れるのはどこだろうと考えた時に、ここしかないなと思って。キスはこのシーンに集中して臨むことにしました」
――その直後、トンネル内で横たわり、2人で“死”を選ぼうとする衝撃の展開に、驚いた視聴者の方も多いのではないのでしょうか。 「このシーン、原作では踏切でピアノの音がしていて…と素晴らしいシチュエーションですよね。なので、ドラマでもその通りにやりたかったのですが、踏切で撮影するというのが、いま実は非常に難しくて。他の場所で踏切がある体でやるとか、電車が来ないのに来る体でやるとか、いろいろなうそをつかなくてはならず、2人の気持ちが途切れてしまうと思ったんです。それならばあのトンネルで、実際にトラックを走らせてやりたいなと。原作の情緒が好きな方には申し訳なさを感じつつも、いいシーンになったと思っています」 ――迫り来るトラックから浩然が千紘を救い、2人は“生”を選びます。さらには浩然がその壮絶な過去から封じられていた”痛み”を感じ、いわば浩然の魂が再び宿ったことを感じさせる素晴らしいシーンでした。 「“痛みを感じている”というのははたから見て分かることではないし、浩然の中だけで起こる現象なので、あのシーンは作り上げる難しさを感じました。でも、その直前の沢村くんの『幸せになれるかもって期待しちまう』という芝居がすごく良かったので、ここはもう沢村くん、そして別府くんにお任せしようと。というか、2人に任せてばかりで僕はあまり何もやっていないんです(笑)」