5類移行から1年。コロナってどうなったの? コロナってなんだったの?
「別名『ロング・コーヴィッド』と呼ばれる、新型コロナ感染の後遺症。厄介なのは、症状が多彩で、その原因がまだ明らかでないことです」 そう話すのは、厚生労働省のクラスター対策班や新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードのメンバーを務めた経験を持ち、コロナ後遺症の問題にも積極的に取り組んでいる、東北大学大学院教授の小坂健氏だ。 「数週間で後遺症が治る場合もありますが、数ヵ月、あるいは年単位で、日常生活に大きな支障を来すほどの症状が続くケースもあります。そして、ここが重要なのですが、後遺症に苦しむのは重症化した人だけではありません。 軽症や無症候だった人も後遺症を抱えるケースがあるのです。そのため、重症化リスクの低い若年層にとって、感染自体はリスクじゃないにしても、後遺症のリスクは人ごとではないのです」 コロナ後遺症に関しては、多くの異なる症状が報告されている。頭がボーッとして集中力や思考力が低下するブレインフォグ(脳の霧)や、味覚・嗅覚の異常、うつ病、意欲の減退などの「神経系」「精神系」の症状。また、心臓や肺への障害や血栓症といった「循環器系」「呼吸器系」の症状も多いという。 しかも、アメリカで行なわれた調査によれば、自分がコロナ後遺症を抱えている自覚がない人の中にも、なんらかの形で認知機能の低下が起きているケースが一定数確認されているという。また、カナダで行なわれた別の調査によれば、コロナ感染の回数が増えるたびに後遺症のリスクが高まるという報告もある。 「もうコロナのことなど忘れて、普通の日常を回していきたい......という雰囲気は日本に限らず、むしろ欧米諸国のほうが先行している気がします。 その一方で、アメリカなどの国では、コロナ後遺症の研究や対策を新たな最重要課題のひとつととらえ、国が多額の予算をつぎ込んでいますし、後遺症に苦しむ当事者たちも巻き込む形で、その原因解明や治療の研究に取り組む体制が作られている。 ようやく普通の日常を取り戻した日本でも、今後はコロナ後遺症に対する取り組みが、これまで以上に重要になってくると思います。まずは後遺症に苦しむ人たちの存在が理解され、その人たちを孤立させることのない社会のあり方が求められていると思います」(小坂氏) ■検証や反省をしない日本の悪いクセ それでも、街中からマスクは減り、社会はかつてのように回り始めている。5類移行から1年を経た今のこの状態は、コロナ禍の終わりだと考えてもいい気がするが、これもまたつかの間の平和でしかないのだろうか? 最後に、感染症のスペシャリストで神戸大学教授の岩田健太郎氏に、日本のコロナの現在地と今後の課題について聞いた。