5類移行から1年。コロナってどうなったの? コロナってなんだったの?
「その最も大きな要因は、日本社会に暮らす人の大半がワクチン接種や感染によってコロナに対して免疫を持つようになったことだと思います。 まず、ワクチン接種に関して言えば、日本人の大半が最低でも2、3回の接種を受けています。 ワクチン接種による感染防御効果は、接種後の時間の経過やウイルスの変異によって大きく失われていきますが、T細胞の働きなどによる重症化予防効果については、ある程度、長い期間持続することがわかっていますし、ワクチン接種を受けた後にコロナの感染を経験した人は、より強力なハイブリッド免疫も獲得している。 その結果、もともと感染しても重症化しづらい若者はもちろん、高齢者や基礎疾患のある人も重症化率が大きく下がり、感染の波が来ても医療現場の逼迫などにつながらずに済んでいるのでしょう。 ただし、その重症化予防効果も時間とともに少しずつ落ちていきます。また、先ほど示したコロナ関連死亡者数でもわかるように、高齢者や基礎疾患を抱えた人の一部は今も感染によって深刻な影響を受けるので、決してコロナが終わったというわけではない。 海外においても、最近大きな流行の波に見舞われたオーストラリアでは、医療機関で大規模な院内感染が起き、多くの入院患者が死亡する事態になっています」(宮坂氏) ■現在の主流株は「JN.1」と「KP.2」 では、ニュースでもよく取り上げられ、新たな名前が次々と報道されていた、ウイルスの変異に関してはどうなっているのか? 「新型コロナウイルスの変異も依然として続いています」 そう語るのは、研究チーム「G2P-Japan」を率いて、新型コロナウイルスの変異の最前線を追い続けるウイルス学者で、東京大学医科学研究所の佐藤佳教授だ。 「今、日本で主流になっていると考えられているのは、オミクロン系の『BA2.86』から進化した『JN.1』という変異株なのですが、最近、アメリカやカナダ、イギリスなどでは、そこからさらに変異した『KP.2』という株が急激に増えており、今後はこれが日本でも主流になる可能性が高いとみています。 また、変異を重ねるたびに、ウイルスの免疫をすり抜ける力が増していくという傾向も続いていて、『KP.2』に関するわれわれの最新の研究でも、『JN.1』株への感染やXBB対応型ワクチンの接種によってできる中和抗体をすり抜ける力がさらに増しているので、感染防御効果はあまり期待できない可能性があります」