山本美憂のあごにアザ。RENAが浴びせた総合格闘技の洗礼!
「対戦できて良かった。試合前、試合中、試合後と緊張感を楽しめた。常に冷静な自分がいて、狙った技で決めることができた。成長できたかなと思う。正直、負けることはありうると考えていた。でも対戦することに意味があると思っていた。負けても盛り上がる。絶対に負けたくないという気で臨んだけれど」 試合後、RENAは、そう本音を語った。 総合での確かな必殺の武器を持ち、作戦を実行できたRENAと、まだ何が武器かを見つけることができずに総合でのフィニッシュを描くことができなかった美憂。2人の勝負を分けたのは、プロという名のリングで経験した修羅場の数の違いだった。 RENAには、すでに11月11日には、東京TDCホールにて、シュートボクシングの2年に1度の祭典『S-cup 2016』でのワンマッチに出場予定が組まれていて「次も絶対に負けられない」と言う。この逞しさもRENAの力になったのだろう。 一方、敗者となった美憂は、「悔しいです。絶対に勝ちたかった」と、ファイターらしい敗戦の弁。 息子のアーセンからは、「大丈夫。俺は最初はそう(敗戦)だった。ママは強かった。次は勝てるよ」と激励を受けたという。 「最高の舞台に立てた自分がラッキーだし気持ちよかった。レスリング時代には味わえない緊張感があった。あんまり覚えていないが、いいところはあったのかな? (MMAを)始めたばっかり。いい勉強になった。負けて終わるわけにはいかない。これで火がついた」 さっそくリベンジを誓った。 カナダに拠点を移し、カナダ代表としてレスリングでリオ五輪出場を本気で狙ったが、国籍を取得することが、カナダの国内選考会に間に合わず、競争の場に立てなかった。その悔しさと、準備を無駄にしないため、MMAのリングに一大決意で戦いの場を移した。タックルと投げ技以外は、すべて新しく覚える技術となるMMAのデビュー戦で、いきなりMMAを一度経験していて、立ち技最強のRENAを相手にするのは、荷が重たかったのかもしれない。だが、それが42歳の元世界女王の格闘家の本能を呼び起こしたことは間違いない。十分に通用する高速タックルや、まだ数か月しか練習をしてない打撃にも非凡さは伺えた。 おそらく次戦の舞台は、年末の「RIZIN」のワンマッチ。美憂の成長次第で、いずれRENAとの再戦もマッチメイクされるだろう。テレビ中継では、メーン扱いされたほどレベルの高い女子格闘技は、注目を集めている。しかも、美形というキャラもエンターテイメントスポーツとしては魅力だ。立ち技最強からMMA最強女王の座を手にしたRENAと、リベンジを誓う元世界女王の戦いが、今後、その“美しき戦い”の中心になるのかもしれない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)