乳がんになった人の月経トラブルや更年期不調、どう解決できますか?【我慢しないで快適に過ごす、閉経への道 ⑨】
乳がんは40代から60代が発症のピークで、閉経前後、更年期とも重なる。しかも日本人女性では、まもなく「9人に1人」から「8人に1人」がかかる時代に。早期に発見すればほとんど治るといわれるので、怖がりすぎないことも大事だ。でも、ホルモンを抑制する治療が多い中、更年期の症状が出たらどうすれば? 婦人科の医師も悩ましいのが、ホルモンに依存するタイプの乳がんの場合だ。女性ホルモンは抑えなければならない、更年期の症状は改善したい…、そんなときどのように対応しているのか、信頼できる婦人科の専門医に聞いた。
乳がんだから仕方がない、と諦めないで!
更年期をはじめ、女性の生涯にわたる健康に寄り添ったわかりやすい解説に定評がある産婦人科医の対馬ルリ子さんはこう話す。 「年齢にかかわらず、乳がんの方が本当に増えています。『9人に1人が乳がんになる時代』を実感してしまいますね。 乳がんになった方は乳腺外科の先生が主治医になるので、婦人科で更年期や月経の困りごとを相談する人は少ないでしょう。乳腺の先生の立場なら、『あなたは乳がんなんだから余計なことをしないように。命が優先でしょう』ということになりますし。 でも、更年期の症状がつらいという人はたくさんいます。メンタル的にも体調も。乳がんの既往歴に対しては、ホルモン補充療法(HRT)はやりたくてもできないことが多いので、代用としてはエクオールのサプリメント、漢方薬などですね。乳腺科の主治医によってはエクオールもだめという人もいます。 『サプリメントは一切信用がおけない』という方、『漢方もよくない』『イソフラボンも当然だめ』『ビタミン剤もだめ』という先生もいるんですよ。逆に『ホルモン補充療法をやってもらってもいいんじゃない』という、QOL重視の乳腺の先生もいる。乳がんのフォローアップは10年なので、その患者さんの主治医の考え方はとても重要ですよね。主治医が漢方もだめだったら、一時的に腟錠を使ったりプラセンタを使ったりします。プラセンタもだめという先生もいらっしゃいますが…。 あれもだめこれもだめ…何もできない場合は、乳腺の先生にお手紙を書いて問い合わせしたりしますよ。医師同士が連携をとらないといけないのは当然のことだから。乳がんの患者さんが増えてきて、乳腺の先生も変わってきているんじゃないでしょうか。 患者さんにはなるべく不安を与えないように『使えるものはいろいろあるのよ』と皆さんに説明します。だって人生は長い。もう90歳、100歳までが当たり前。乳がんだからとつらいことに対して何もせずに手をこまねいていたら、人生の後半が苦しくなりますよね。閉経期、更年期を諦めて過ごさないことです」