【毎日書評】昔話『花咲かじじい』の欲張りじいさんは「パワハラ上司」?やらかした大失敗から学ぶ
幼かったころ、童話や寓話を親に読んでもらったり、あるいは自分で読んだりした経験は誰にでもあるはず。いうまでもなくそうした童話の数々は、洋の東西や時代を問わず読み継がれてきたものです。 そしてその多くは「悪いことをすると、必ずあとでしっぺ返しがありますよ」ということを教えてくれる勧善懲悪ものでもあります。つまり私たちは童話を通じて、倫理観を形成してきたのでしょう。 ところが『グリム、イソップ、日本昔話-人生に効く寓話』(池上 彰、佐藤 優 著、中公新書ラクレ)の共著者である池上彰氏によれば、「大人になって読み返してみると、『これはどういう意味だろう』と頭をかしげたくなる内容の童話も決して少なくない」のだとか。つまりは、勧善懲悪になっていないケースもあるということです。 では、現代の私たちは、こうした童話からどのような「教訓」を読み解けばいいのか。そんな問題提起を佐藤優氏から受け、実現したのが本書です。 改めて読んでみると、日本で読まれている海外の童話の多くは、日本風にアレンジされているものが多いことに気づきました。 また原作は子どもに読ませるには恐ろし過ぎる内容を含んでいるものも多いのです。私たちは、原作が持つ棘を抜いて漂白されてしまったものを読まされていたことに気づきました。 さらに一見微笑ましく見えたような童話も、佐藤氏の手にかかると、実に恐ろしいものに思えてきます。また、実は現代に通じる重要な内容を含んでいることに気づかされたりの数々でした。(「はじめに」より) それは、「単なる童話」と片づけるわけにはいかない内容を含んでいるからこそ、「人生訓」の古典として受け継がれてきたのだと解釈することもできます。そこで本書では、誰もが知るさまざまな童話を、従来とは異なった角度から読み解いているのです。 きょうは第二章「競争社会の作法」内の7「インセンティブなしでは部下は動かない 『花咲かじじい』に注目してみたいと思います。