不登校は「大人の無理解が原因」、不登校の子どもと親がトーキョーコーヒーに集まる訳
不登校は子どもの問題ではなく、大人の無理解によるもの
「不登校の児童生徒の増加」という社会課題と向き合い、多様な大人が集い、学び、子どもたちの居場所を作り、教育のアップデートを目指すプロジェクト「トーキョーコーヒー」が注目を集めている。2022年8月、アートスクール「アトリエe.f.t.」代表の吉田田(よしだだ)タカシ氏が奈良県生駒市で始めたこの取り組みは、2024年4月現在で全国に361拠点と急速に拡大。その根底にあるのは、「不登校は子どもの問題ではなく、大人の無理解」という思いだ。吉田田氏と、都内の拠点で活動する主宰者を取材した。 【写真】「トーキョーコーヒーあだち・かつしか」恒例の味噌づくり 文部科学省によると、2022年度の小中学校の不登校児童生徒の人数は、29万9048人。10年連続で過去最多を記録した。また、厚生労働省によると、2023年の小中高生の自殺者数は507人で、過去2番目の多さという数字が示されている。子どもたちが置かれている環境が深刻化しているのは、まぎれもない事実だ。 「(不登校の)子どもたち一人ひとりには、まったく問題ないと思っていて。これだけ不登校が増えているのは、『学校は、僕たち(私たち)にとって、こんなにも行きたくない場所になっているんだよ』という、子どもたちの必死の叫びなのだと受け止める必要があると思っています」と語るのは、大阪市・奈良県生駒市のアートスクール「アトリエe.f.t.」代表で「トーキョーコーヒー」を立ち上げた吉田田タカシ氏だ。 芸術運動の「ダダイズム」にちなんで自らを「吉田田」(よしだだ)と名乗り、活動している。吉田田氏は続ける。 「社会はこれだけ変わっているのに、日本の教育は、学制発布以来150年、大きなイノベーションが起こることなく同じ道を歩み続けています。学力や偏差値など限られた物差しだけで子どもを測るような考え方や仕組みは『今の時代に合わなくなっているのかもしれない』とみんな頭ではわかっていても、『よい成績をとって有名大学に入り、有名企業に入ることが人を幸せにする』という固定観念から抜けきれていないように感じます。 不登校は子どもの問題ではなく、大人の無理解によるもの。不確実性の高い現代において、『本当の幸せとは何か』『本当の豊かさとは何か』について大人たちが真剣に議論し、行動を起こさないと、そのしわ寄せはすべて、子どもたちにいってしまうのではないでしょうか」 「トーキョーコーヒー」は、「登校拒否」のアナグラム(並び替え)として生まれた言葉。多様な大人が集まり、農業、料理、手芸、アートなど自分たちが主体で楽しめる活動をしながら、教育や社会について大人同士が対話し学び合う“拠点”だ。 子どもたちはそこで自由に時間を過ごす。大人の活動の場だから、子どもたちは何をしてもOK。そこで過ごすうちに何かやりたくなったら、大人はそれを応援する。押し付けられない場所だから、学校に行かない子どもたちにとっても安心して過ごせる場所になっているという。 「『子どもが安心してそこに居られる場所は、“子どもたちのためだけ”に作ってはいけない』と、僕は思うんです。なぜなら、不登校など子どもの問題は、すべての大人の問題に直結しているから。大人が、子どもが学校に行かない理由や背景を理解しないままに『学校に行けないならこっちで学びなさい』と、単純に学校以外の居場所を作るのではなく、大人同士が集い、語らい、自分自身の悩みから解放され、価値観をアップデートさせる場所を作る。大人たちが楽しそうに過ごしているその場所に、『子どもも自由に来ていいんだよ』と声をかけることが、子どもにとっての真の意味での安心につながると思います」