「夜の街がいつ潰されてもおかしくない」現職の3選で先行き不安……都知事選と歌舞伎町の悲喜こもごも
7月7日、日曜日。奇しくも七夕が開票日となった東京都知事選挙で当選を果たしたのは、現職の小池百合子氏(71)だった。 「舐めてんなよ!」歌舞伎町で女性がカッターで…「ホスト刺傷事件」衝撃の現場写真 筆者は歌舞伎町の投票事情を探るため、知り合いのホストに「投票、行った?」とLINEをしてみた。 しばらく経って返ってきたメッセージには、「織姫に会う準備してるからそんな余裕ない♡」と記されていた……。 それもそのはず、歌舞伎町において七夕は浴衣のホストたちがせわしなく街を行き交う″イベント日″なのだ。 「東京、そして日本の政治がよくなりますように」なんて願い事を短冊に書くホストはほとんどゼロに等しい。「ナンバーワンになれますように」と星に願うのが、ある意味ではホストの正しい七夕の過ごし方なのかもしれない。 一方で、″歌舞伎町視点″で今回の都知事選を楽しんだホストもいたようだ。 「仕事仲間や姫(客)と、『百合子と蓮舫、ホストにハマりそうなのはどっち?』みたいなお題で投票し合って、票の少ないほうを選んだら罰ゲームでイッキ飲み、みたいなゲームをして遊んでました(笑)」 そう話すホストのハルト(仮名・25)は、実際の投票所にも足を運んだという。 「前回の都知事選の頃、俺は地元から住民票を移してなくて。だから選挙も、『東京に一生住むわけじゃないし』と思って行かなかった。でも、4年経ってもホストをやってて、最近は経営側にも関わるようになって住民票もこっちに移したので、都民として行きましたよ。上司からも選挙に行けって言われてたので」 ホスト界隈では田母神俊雄氏(75)がなぜか人気を博しており、同氏を応援するために、と投票所に向かったホストも多数見受けられたのだが、ネットリテラシーはやはりお粗末。 「自分は夜の人間だけど、きちんと選挙に行っている」というアピールのためか、投票所内で、自分の投票用紙を撮影し「投票しました」との文言と共にSNSに投稿する不届き者が複数確認された。 3選を果たした小池氏は、2期目の在任中に「悪質ホストクラブ」に対する対策チームを設置するなど、ホスト業界に対して厳しい視線を向けていることで知られるため、ホストたちは小池氏の都政が続くことを恐れていたという。 「百合子に東京を任せれば、夜の街がいつ潰(つぶ)されてもおかしくない! 石丸さん(伸二・41)か田母神さんに都知事になってほしかった。次の都知事選は夜の人間全員で選挙に行きたい!」 なんとも乱暴な論理だが、そんな主旨の投稿が、ホストたちのSNSには溢(あふ)れかえっていた。 「『政治についてちゃんと考えてるよ』とか『参加してますよ』っていうアピールなんでしょうね」 キャバ嬢のアスナ(仮名・28)は苦笑しながら言う。 「私も20代前半の頃は税金も払わず夜の街でテキトーに稼いで生きていて、都政なんて関係ないって思ってました。でも、ちゃんと税金を払うようになってから、選挙に行くようになった。 若者で選挙とか政治に関心持ってるのってある種のステータスみたいなところがあるから、『投票したぞ!』ってことをアピれるようなグッズが欲しいなって思いますね。投票して偉いね! みたいなシール貰うとか、いいことしたぞってSNSにアップできる証明みたいなものが」 シールで歌舞伎町の投票率が上がるのなら、一考の余地はあるかもしれない。 『FRIDAY』2024年7月26日・8月2日合併号より 取材・文:佐々木チワワ ’00年、東京生まれ。小学校から高校まで都内の一貫校に通った後、慶應義塾大に進学。歌舞伎町を含む繁華街の社会学を研究している。卒業後はライターとして活動。本連載をまとめた新刊『ホスト!立ちんぼ!トー横!オーバードーズな人たち』(講談社)が好評発売中!
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