高齢化など逆風多いニュータウンなのに人口増続く千葉・ユーカリが丘。モノレール・子育て支援施設・農園まで住民のために”自給自足”し続け50年、時代の壁に挑む 山万
世代間の垣根を超えた交流を生む
コミュニケーションや他者交流の仕組みについても考えています。 総合子育て支援センターや老人保健施設、グループホームなどの福祉施設も多数増やしているとのこと。なかでも「ユーカリ優都ぴあ」は、多世代交流のシンボルスペース。学童保育所とグループホームが一体型になった幼老複合施設。機能は全く別物ではあるものの、ふれあいスペースやケアガーデンでは、世代を超えた交流が行われています。例えば若年世代の遊びに、高齢者が一緒になって会話をしたり、教えたりする。一方、高齢世代が歩くことや動作をしようとする際に困難だったら、自然と児童たちが手を差し伸べる。普通に過ごしていたらなかなか生まれない交流が、ここでは自然な形で発生するのだそう。
“五感を味わう”をテーマにした「ユーカリ優都ぴあ」併設のケアガーデン。高齢者や障がい者が五感を働かせることは、彼らの身体活性化にもつながる。ガーデンの中を散歩するなかで、手で触れ、香りを嗅ぐなど全身で味わうことができる。
福祉施設「ユーカリ優都ぴあ」。グループホームと学童保育所が一体して存在する。
持続的な街づくりのために、次の一手を考え続ける
社会全体が高齢化、人口が減少していくなかで注目したい仕組みがあります。住み替えなどで空き家になった中古住宅に、新しい住民に住んでもらうための「ハッピーサークルシステム」という仕組みで、2005年より力を入れています。例えば、戸建て住宅からタウン内の老人保健施設やマンションに移り住む高齢者の家、若い世代が子育て期に差しかかり、マンションから戸建てに住み替える際に従前の住まいを買い取り、リニューアルを経て、新たな入居者に向けて再販売しています。このおかげで古くから住む住民は、住居を変えてこの街に住み続けることができるように。また新たな住民には、手頃な価格の戸建住宅やマンションを選ぶ選択肢が増えたのです。
永続的にこの仕組みが続くかは未知数です。なぜならば人口流入が増えていたとしても住宅供給数が増え続ければ、いずれ空き家を含めた住宅供給数の方が超過してしまう可能性があります。その時に、果たして山万がどのようなことをなしとげていくのか。街に関わる人にとっては興味深いところなのではないでしょうか。 1996年に創刊した、自治区内で作成しているタウン誌「わがまち」。暮らす人たちと山万が協働でつくり上げています。住民の声を掬い上げるために「わがまち」を通じてアンケートを実施することも。その回答率は非常に高いことから、市民の関心度合いの強さを感じる。 「私たちは長期的な視点と住民満足度の最大化を目指して街づくりを行ってきました」と池上さんは話しました。とはいえ予測不可能な現代ゆえ、この先10年のことですら誰も予測がつきません。もしかしたら住宅と人、街の関係は自分たちが想像し得ない仕組みや構図になっているかもしれない。「だからこそ、千年先まで街が栄えるように、時代にあわせて柔軟に考えを変えながら、施策を模索し続けていく、という姿勢はやめてはならないと思っている」と池上さんは続けます。 持続的な街づくりをするためには、街をつくる人、住む人たちはただ建てて・暮らすことをどこか1団体に頼るのではなく、住民と民間会社と行政が全員手を取り合って協議しながら歩む必要があるということです。それも、決まったシナリオ通りではなく、時には奇想天外な手法や考え方も。これからはこうした柔軟性が必要なのでしょう。 ●取材協力 山万株式会社
永見薫