高齢化など逆風多いニュータウンなのに人口増続く千葉・ユーカリが丘。モノレール・子育て支援施設・農園まで住民のために”自給自足”し続け50年、時代の壁に挑む 山万
利益を追求する気持ちは少ない、ただ求められるからつくり続けた
「開発が始まる前の1960年代は、豊かな自然にかこまれ、宅地はほとんどなく、田畑や雑木林が広がるのどかなエリアでした」と語る池上さん。 時代は高度成長期、全国各地で人口は増え続け、住宅の供給も追いついていない状況でした。つまり地方から都市部に人がどんどん集まる時代。山万は繊維業から不動産業に完全に転換したのには、こうした人々のニーズに応えようとするものでした。そこをただの住宅開発販売にとどまらず、思い切って街を形成していくというのが興味深いところ。
「住民から『これがあれば便利なのに』という声が上がる前に、必要になるであろう施設やサービスを手がけてきました」(池上さん) 例えば、駅周辺にはホテルを建設するほか、商業施設なども手がけました。また、映画館を誘致するために、まだ新しいビルを買い取ってそれを壊し、新たに商業施設の建設まで行ったそうです。 開発当初から、交通利便性を確保するために新交通システムを導入。どの住宅から歩いても徒歩10分圏内に駅舎があるように、駅の場所と数を決めたとか。また、バスと違って交通渋滞を起こさない点や排気ガスを出さない点も、導入のポイントになったそうです。 「普通の分譲住宅の、建てて売り切るという方式と一緒では、街はあっという間に高齢化してしまいます。また、生活する上で不便を感じるとより快適な街を求めて人が移動してしまうため、必要なものはどんどんつくっているんです。便利であれば人が集まりさらに新しいサービスの提供につなげることができます」
暮らすも働くもこの街で。自給自足の仕組みづくり
ここまで山万の街づくりは順調なように見えます。とはいえ、ユーカリが丘でも住民の高齢化、それにともなう住民の減少や入れ替えは想定しうる課題でした。そのために、中長期的に計画していたプランを断続的に打ち出し続けます。街づくりを行う際には、マンション建設を一気に行わないようにしています。 来たる人口の流動の波を見据えて2013年以降、駅前に新たな高層マンション「ユーカリが丘 スカイプラザ・ミライアタワー」を建設。以降、2024年現在までに多世代型の住居となる駅前立地の大規模マンション「スカイプラザ・ユーカリが丘ゲートフロント」を竣工(WEST SIDE PROJECT)しました。若い世代の新規流入を促すだけではなく、開発当時から戸建住宅に暮らす高齢者層の、住み替え需要もねらったそうです。