新型セレナ オーテック・スポーツスペックは、“日産ファン”の熱い期待に応えたミニバンだった!
全高1865mmの背の高いミニバンを上手にまとめている。
試乗は最高速100km/hのテストコース内を4周ほどしただけである。コース内には軽いアップダウンとごく短いコーナーの連続が設けられている。その範囲で申し上げると、正式名称セレナe-POWERオーテック・スポーツスペックは快適なハイウェイクルーザーだった。 低速だと、若干乗り心地が硬めであることは否めない。足まわりが基準車より硬められ、ミシュランの17インチのZRタイヤを装着しているのだから当然だ。その分、高速走行は安定している。セレナはいまどき、いかにもミニバンで、着座位置は高くて、いかにも腰高で、重心も高そうである。それを無理やり曲がる、スポーティなクルマに仕立てようとしていない。筆者の見るところ、曲がりたがらない。それでよいのである。物理の法則に逆らっても、よいことはひとつもない。といって、曲がらないわけではない。腰高な感じはするけれど、不安感はない。全高1865mmの背の高いミニバンを上手にまとめている。 VCMの専用チューンは効果的だ。軽くアクセルを踏んだだけで、爽快な加速感を堪能させてくれる。ドライブモードはスタンダードでも十分力強い。スポーツにすれば、なおさらである。 静粛性はかなり高い。走行中、気になったのはエアコンの吹き出し音だった。温度設定が18℃になっていたせいもある。 オーテック・スポーツスペックを含めたオーテックバージョンは、セレナの販売台数の5%程度を見込んでいるという。その5%のうち、オーテックとオーテック・スポーツスペックの販売比率はおおよそ50%ずつだそうで、考えてみたらニッポンのメーカーで子会社が開発したファクトリーカスタムをカタログモデルとして販売していること自体、珍しい。海外ではメルセデスAMGとかBMW MとかアウディRSとかの例がある。 日産ファンは、ミニバンを買う人でも熱い。セレナ・オーテック・スポーツスペックはその熱い期待に応えている。
文・今尾直樹 写真・田村翔 編集・稲垣邦康(GQ)