東大行くより難しい棋士になった西尾明さん 中学受験は塾に通わず奨励会と両立で 私の受験時代
母校の浅野は「ザ・男子校」の雰囲気。自由に何でもやらせてくれる学校だったので、将棋に打ち込んでも、強く「勉強しろ」と言われることもなく、過ごしやすかったです。まあ、将棋もあったのであまり学校の勉強に力を入れてはおらず、入学後の成績は落ちていったのですが。
将棋部はあったものの、当時はあまり強くなかった。入部はしていませんでしたが、将棋部の部長に対戦を挑まれて指したのは、いい思い出です。そんな母校が令和6年、文部科学大臣杯の団体戦で初優勝したんです。ものすごく強くなって、うれしい限りです。
■時間の使い方を工夫し、集中を意識して
当時は「将棋は職人の世界。目指すなら早めに専念したほうがいい」という考え方が主流でした。それが今では東大生や医学部生が棋士になる。時代は変わったなと思います。
何か2つを両立するって、すごく難しい。けれど、一つのことに打ち込むことが、もう一つにプラスに働くことは必ずあります。中学受験生には、時間の使い方や集中を意識して、合理的に頑張ってほしい。受験は「大きなこと」ではあるけれど、後で振り返ると人生を左右するほどでもない。どんな結果になろうと、過程に重きを置いて「いい経験だったな」と思ってもらえたら。
親となった今、その視点で当時を振り返ると…子供の細かいところを見るよりは、大きな方向性を見てあげて、大きくそれたらちょっと修正するくらいでいいのではないでしょうか。両親からは勉強のことも将棋のことも細かく言われた記憶がありません。それがよかったのかもしれません。(田中万紀)
■西尾明
にしお・あきら 日本将棋連盟所属の将棋棋士七段。昭和54年、横浜市生まれ。平成2年に小学5年生で奨励会に入会。浅野中学・高校を卒業し、東京工業大学(現・東京科学大学)生命理工学部に入学。中退後の15年に23歳でプロ棋士に。現在は日本将棋連盟の常務理事を務め、地元で「横浜西口こども将棋教室」を主宰している。