任天堂が「スマホゲームに負けない」理由。「Switchの後継機種」は“1兆円の山”を超えられるか
Switchの成功がなければ…
近年の業績を見てみると、やはりコロナ禍では巣ごもり需要が牽引し、売上・利益共に大幅に増大しました。2020年3月期から24年3月期における業績推移は次の通りです。 【任天堂株式会社(2020年3月期~2024年3月期)】 売上高:1兆3,085億円→1兆7,589億円→1兆6,953億円→1兆6,017億円→1兆6,719億円 営業利益:3,524億円→6,406億円→5,928億円→5,044億円→5,289億円 21年3月期、22年3月期の好調は外出自粛で娯楽が少ない中、据置機としても遊べる携帯型ゲーム機「Nintendo Switch」が注目されたことが要因です。初代Switchは2017年3月に発売され、2018年3月期以降、任天堂はWiiのヒットに続く売上高1兆円超えの山を維持してきました。巣ごもり需要とはいえ、Switchの成功がなければコロナ禍の業績拡大は無かったことでしょう。 24年3月期は需要の一巡もあり、同社は売上高1兆4,500億円を予想していましたが、23年5月発売の自社ソフト「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」が1年で2,000万本超えとなるヒット作となり、業績を牽引しました。また、任天堂初の映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」によるゲーム販売効果も相まったことで23年3月期以上の業績となりました。
自社ソフトが売れるため、スマホゲームに飲み込まれず
任天堂の地域別売上高を見ると、24年3月期は国内が21.7%で8割弱を海外が占めます。全体の44.3%を占める米大陸(特にアメリカ)は主力の市場です。そして商品別に見ると、他社ソフト販売によるロイヤリティ収入は意外と小さく、主な収入源は自社ハード(Switch)と自社ソフトの販売です。Nintendo Switch用ソフトの売上高全体に対し、任天堂製ソフトの売上は約8割を占めます。 近年のミリオンセラーソフトは他社が10数本であるのに対し、任天堂は毎年20本以上を生み出してきました。「マリオカート8 デラックス」は発売から24年3月期末までに6,197万本、「あつまれ どうぶつの森」は4,536万本も売れています。魅力的な自社ソフトがあるからこそ、ハードも売れ、台頭するスマホゲーム市場の波に飲まれなかったと言えます。 ちなみにSwitchはシャープの買収で知られる鴻海精密工業が主に生産しています。自社工場を持たないファブレス経営を進め、8割という高い自己資本比率を維持してきました。