佐々木希が、”鶏”を愛するナチュラルワイン界の巨匠に会いに行った日
日本にあるワイナリーに定期的に訪れ、ナチュラルワインを巡る旅を楽しんでいる佐々木希さん。佐々木さんのワインノートには、訪れたワイナリーのメモや、これから行きたいワイナリーに関する情報がたくさん。連載第11回目は、すこし時をさかのぼって、ワイナリー巡りを始めたばかりの頃のお話をお届け。山梨県甲州市にある「ドメーヌ・オヤマダ」でナチュラルワイン界の巨匠のひとり、小山田幸紀さんのワイナリーにお邪魔して、ワイン造りの現場で感銘を受けたエピソードを伺った。 【写真】日本ワイン発祥の地といわれる地域へ…駅について記念撮影する佐々木希さん ナチュラルワインにハマってから、さまざまなワイナリーを訪れ、醸造家の知り合いも多い佐々木さん。そんな佐々木さんがまだワイナリー巡りを始めたばかりの頃に訪れたのが、山梨県甲州市にある『ドメーヌ・オヤマダ』。 「甲州市の勝沼にある『ペイザナ農事組合法人 中原ワイナリー』という場所にあるのですが、『ドメーヌ・オヤマダ』といえば、入手がなかなか難しいとされる有名なワインをリリースしているワイナリーです。比較的手に入れやすい価格なのですが、それにしても見つけたらすぐに購入しないとなかなか出会えない。数年前、そんな『ドメーヌ・オヤマダ』に伺える機会があり、またとないチャンスということでナチュラルワイン界の巨匠、小山田さんに会いに行ったのです」
巨匠・小山田さんのワインをフレンチとともに
駅に着き、最初に立ち寄ったのが、『エリソン・ダン・ジュール』。ワイナリーに近いこともあって、庭先ではヤギを飼っていたり、自然豊かな場所にあるフレンチレストラン。 「小山田さんのワインはもちろん、人気の『ドメーヌ・ポンコツ』さんの白ワインもいただきました」 お腹を満たして、いざ、『ドメーヌ・オヤマダ』のワイナリーへ。 佐々木さんが写真を撮った『ペイザナ農事組合法人 中原ワイナリー』は、小山田さんが『ドメーヌ・オヤマダ』の設立とともに立ち上げた、隣接の共同醸造所。 『ドメーヌ・オヤマダ』のほかに、松岡数人さんによる『ドメーヌ・ポンコツ』、吉田裕一による『パパプル』という2つのワイナリーがある。ぶどうの栽培やワイナリーに携わりたい農業者や醸造家たちが集まり、助け合う場になっているのだそう。 「小山田さんは、ナチュラルワイン界で知らない人はいないくらいの巨匠であり、ナチュラルワイン人気を支える立役者」と語る佐々木さん。同じく北海道の巨匠、ドメーヌ・タカヒコの曽我貴彦さんに会った時と同じくらい、かなり緊張していたのだという。 「ワイナリーに訪れるようになって2ヵ所目に、お邪魔したのが小山田さんのところでした。初心者として学ばせてもらうような気持ちで緊張しながら、いざお会いしたら……拍子抜けするほどフレンドリーな方で(笑)。 小山田さんといえば、業界では“鶏を愛する醸造家”としても有名なくらい、かなりの鶏ラバーなのですが、この時も鶏を抱きながら終始笑顔でいろいろなお話をしてくれました」 各地からやってきた醸造家が小山田さんを囲み、ワインを飲みながら談笑するその輪の中に入り、温かな気持ちになったという佐々木さん。 「この時にはじめて知ったのですが、ナチュラルワインの生産者の方々は、持ちつ持たれつで、みなさん誰かの畑のお手伝いをされていて、絆が深いことを感じました。 今では誰かのワイナリーに集まって、みんなでわいわいとする姿を見るのが当たり前のようになっていますが、この時は、小山田さんを取り囲むように、山梨にある有名なワイナリーの生産者たちが集まっているのがすごく新鮮だったんです。 その時に、ナチュラルワインの温かみは、ナチュラルワイン造りが本当に好きな人が手がけていること、醸造家さん同士の絆の深さから生まれるものだということを実感しました」 この時に試飲をしたのは、ロゼワインの「万力(まんりき)」と白ワインの「洗馬(せば)」。 「ワイナリーで試飲させていただくことがとにかく新鮮で、大自然を眺めながら飲むワインはそれだけで最高でした。『万力』は、個人的な感覚ですが、爽やかな酸味とどこかハチミツのような香りがして、お料理と一緒にぐいっと飲むより、少しずつ味わいながら飲むのにおすすめ。『洗馬』も芳醇な香りで、余韻をしっかり楽しめます」 もうひとつ、佐々木さんが感動したのが、ぶどう畑。 「今でこそ、さまざまなワイン農家さんを見学させていただいているので、違いなども多少はわかるようになったのですが、この時は『とにかく広い!』『丘からの眺めがいい!』とテンションが上がりっぱなしでした」