「知らないうちに組織不正に関わっていた」組織不正は「正しいつもり」から生まれる理由
学士会YELL主催によるミニプレゼン会にて、『Z世代化する社会』の著者・舟津昌平氏らによる出版記念シンポジウムが行われた。 今までの研究で最も有力だとされてきた「不正のトライアングル」 本記事では、『組織不正はいつも正しい』を上梓した立命館大学経営学部准教授の中原翔氏による講演をベースに、組織不正への誤解とその実像を解説する。 ■組織不正は「正しさ」から生み出されている 組織不正には、どのようなイメージをお持ちでしょうか。 おそらく多くの方が、明確な意図を持って不正に関わった人がいて、それが組織問題にまで発展するというイメージをお持ちだと思います。そのイメージは、学術の世界では長く正しいものだとされてきました。一番有名な研究として、不正のトライアングルというものがあります。
不正のトライアングルでは、不正行為は、「①利益の獲得やプレッシャーといった動機」と「②不正を行うことができる環境や時期といった機会」、「③行為は仕方がないものだという正当化」の3つの要素が結びつくことによって起こるものだと説明されています。 しかし、2012年にドナルド・パルマーという社会学者が発表した研究以降、不正に関わる人が必ずしも意図的ではない、という視点から組織不正が捉え直されています。つまり、不正に関わっている人は、自分は正しいという認識のもとで不正を行っているということです。なおかつ、そうした人が関わることで、組織不正はより大きな影響を与えてしまうということも、次第に認められるようになってきました。
近年の日本企業の状況を考えても、組織不正を防ぐために、内部統制制度の拡充や監査業務の推進が行われています。意図を持って不正を行おうにも、他者の目をかいくぐることが非常に難しくなっているのです。しかし、組織不正はなかなかなくなりません。だからこそ、今までとは異なるパルマーの視点にスポットが当たっているのです。 ■組織における「正しさ」を見直す その一例として、大和ハウス工業による施工管理技士不正取得事件があります。施工管理技士とは、簡単に言えば建設工事を行う際に管理や監督を行うための資格です。大和ハウス工業では、「この資格を取得することが個人としても組織としても成長につながる」ものと考えられていました。