「知らないうちに組織不正に関わっていた」組織不正は「正しいつもり」から生まれる理由
しかし、2021年に大和ハウス工業は営業停止処分となります。その理由は、資格を取得するために本来必要であった実務経験が足りない人物が「371名」にものぼったからでした。 371名という数字は、個人が意図的に実務経験をごまかそうとして生まれるものではありません。会社における実務経験と、資格における実務経験に違いがあることを知らなかったからこそ、これだけ多くの人物が当該資格を不正取得“できてしまった”と言わざるをえないのです。
おそらく読者のみなさんも、不正に手を染めたいとは考えていないはずです。しかし、過失的な不正はときに起きてしまい、不正に無関心であるゆえに大きな問題にまで発展する可能性があります。だからこそ、組織不正は未然に防ぐことができる、というある意味で楽観的な考え方とは別の視点がなくては、物事の本質を見誤ってしまうおそれがあるのです。 もう少し踏み込んだ言い方として、佐藤義雄氏による拙著への書評の言葉を借りれば、「不正防止には自らの信じる『正しさ』を疑い『正しさ』を見直すことが大事」になってくるのです。
中原 翔 :立命館大学経営学部准教授