「婚姻って何?」 ――同性婚訴訟で違憲判決、 原告の二人が問う結婚のあり方
札幌地裁で3月、「同性婚を認めないのは、法の下の平等を定めた憲法に違反する」という日本初の判断が下された。原告のメンバーで40代の男性カップルは判決を喜びとともに受け止めた。これまでの18年余、同性愛者であることで差別的な扱いをされることもたびたびあった。今回の裁判で訴えたかったことは何か。二人の歩みと、判決の重要な論点に迫った。(文・写真:ジャーナリスト・森健/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
憲法14条1項「法の下の平等」に違反
今年3月17日、朝10時、札幌・大通公園に面する札幌地方裁判所。春と言うにはほど遠い冷え込みのなか、国見亮佑さん(46・仮名)とたかしさん(49)は落ち着かない気分で門をくぐった。傍聴席は20席ほどだが、傍聴券を求めた人は153人。自分たちが思う以上に、世間の関心は高いのかもしれないとたかしさんは感じた。 「自分たちは裁判の中でちゃんと主張を伝えてきた実感はありました。ただ、判決がどうなるかはわからない。もしものときにショックを受けないよう、あまり期待しないでおこうと思いました」
2019年2月、国見さん、たかしさんを含む北海道内の3組6人のカップルは、「同性どうしの結婚が認められないのは、婚姻の自由や法の下の平等を定めた憲法に違反する」として1人100万円の損害賠償を国に求める訴訟を札幌地裁に起こした。同日、東京、名古屋、大阪でも同様の集団訴訟が起こされた(同年9月には福岡でも提訴)。その一連の訴訟で最初の判決が出ることになったのが札幌地裁だった。
午前11時、802号法廷。開廷するとすぐ判決の言い渡しとなった。主文は「原告らの請求をいずれも棄却する」。短い言葉に目の前が真っ暗になったとたかしさんは振り返る。だが、裁判長が判決を読み上げていく中で、廷内の空気が変わっていった。 裁判長は「同性愛は自らの意思に基づいて選択・変更できるものではない」と指摘、世界の医学として同性愛は「精神疾患ではない」と認めていることをあらためて確認した。 その後、裁判長は重要部分に迫る。同性婚の否定については、「婚姻の自由を定めた憲法24条に男女を想起させる文言が使われていて、異性婚について定めたものだ」として、憲法に違反しないと判断した。 だが、「法の下の平等」を規定した憲法14条1項については、「同性愛者が婚姻によって生じる法的効果の一部すらも受けられないのは、合理的な根拠を欠いた差別的な取り扱いだ」とした。つまり、同性婚を認めていないのは憲法に違反すると判断したのだ。 たかしさんは「違憲」という言葉に震えるような感動を覚えたという。 「横を見ると弁護団の先生も嗚咽を漏らしている。傍聴席でも泣いている人がいる。法廷がうねるような感覚でした」