「トップ集団と離れていてもサーキットを沸かせる」──ファインダー越しに見た長島哲太×ダンロップの挑戦
目先の速さにこだわることが今の仕事じゃない
現在、ブリヂストンタイヤの独壇場であるこのクラスに数年間JSB1000では開発の止まっていたダンロップで立ち向かうことは、最初から苦戦を承知でのチャレンジだったであろうことは想像できる。しかし私は、彼がそこまでのきつい戦いを想像していたことに正直驚いた。勝利の壁は高いかもしれないが、苦戦とは言えせいぜい5位・6位くらいの争いだと思っていたからだ。12、13位と言えば、もう中団グループでも下のほう。本来競い合うべきライバルの後ろ姿は全く捉えることも出来ない遥か後方での戦いになる。 幸いにも現実はそこまでの順位にはなっていないが、鈴鹿8耐を2連覇し、予選でも2年連続最速タイムを出した現役のトップライダーが、このポジションにいることでモチベーションを保てるものなのだろうか? 「もう自分の場合は海外に出て1回Moto2で勝って“ある程度やり切った感”もあるんです。これが今もMotoGPを戦っていたり、もう一度海外へ行こうと考えていたら、もちろん耐えられなかったでしょう。しかし、自分は1回世界選手権でやり切って帰ってきた。そして、HRCとテスト契約して8耐も2回勝った。自分のやってきたことや、“スピード”は証明できたかなと思うんです。なので今、それを証明する必要はなく、これ(今までの実績・実力)を使ってダンロップと共に上がっていき、3年後に結果を出すことに照準を合わせているので、この(順位の)悔しさも受け止められますし、焦りもありません。これを糧にして2年後3年後に繋げていきたいと考えています」 自分の気持ちや現在地を彼は冷静に受け止めていた。今までは純粋な速さを追い求めて今の結果にこだわり続けて来た。しかし今、彼がやるべき仕事は、そこではないことを本人が一番自覚している。目先の成績ではなく、あくまで3年間でダンロップタイヤを勝てるタイヤに仕上げること。それが今の長島哲太に託された仕事なのだ。 そして間髪入れずに、「とは言っても、この順位であることはもちろん悔しいですよ」と、付け加える。自分たちは確実に進化している。しかし現在トップとの差は依然として大きい。 「周りもその差をどんどん突き放そうとしています。でも自分たちはそれを埋められるだけのチーム力とダンロップの本気度もあります。焦る必要はないと思います」