【詳報】「危険警報」新設だけがポイントではない 気象に関する防災情報は2年後、こう変わる 第1回“最難関のパズル”は解けたか
国が設置した検討会をこれまでたびたび取材してきたが、事務局がお膳立てしたシナリオどおりに進み、結論を出すものが少なくなかった。だが、この検討会はまったく様相が異なっていた。 意見が一向にまとまる気配のない様子を見て、矢守座長は「人生で直面したパズルの中でも一番難解なパズル」と評し、事務局の気象庁職員は会合が終わる度に頭を抱えていた。 ■2年後に迎える歴史的転換点 おそらく2年後の2026年、気象庁や国土交通省等が発表する〈気象に関する防災情報〉は歴史的な転換点を迎えるのではないか。 決して大げさではなく、検討会の議論に参加してきた“当事者”として、そして、長く気象庁を担当してきた記者として、筆者はそう強く感じている。 報告書公表を取り上げた新聞記事やテレビのニュースなどを見ると、「『危険警報』新設」がわかりやすく見出しにもなりやすいので目立つが、ポイントはそれだけではない。 「複雑でわかりにくい」が、本当に「シンプルでわかりやすい」に変貌するのか。情報の受け手の立場に立った改善が実際に行われるのか。名称が変更されたり、無くなったりする情報はどれか。検討会では具体的にどれほど白熱した議論が行われたのか… すべてを紹介することはできないが、筆者が重要と考える幾つかのポイントを、3回に分けてできるだけ詳しく記そうと思う。 ■気象に関する防災情報は40種類以上 そもそも〈気象に関する防災情報〉は、現在どれくらいの種類や数が存在するのだろうか。 気象庁によれば、ゆうに40以上を数え(図-2参照)、あらためて書き出してみると「こんなにあるのか」と驚く。東京23区で生活している筆者は「なだれ注意報」や「融雪注意報」等を身近な情報として感じたことはなく、名前は知っていても馴染みのない情報が多い。 また、暴風警報や波浪警報のように「警戒レベル」に紐付いていない(レベル相当情報ではない)警報もあれば、「記録的短時間大雨情報」のように警報でも注意報でもレベル相当情報でもないのに、災害発生との結び付きが強い重要な情報もある。警報のない注意報も存在し、実に多種多様だ。