日本の対外投資、国内環流に向けじわり胎動-インド経済上回る630兆円
かんぽ生命保険クレジット投資部の小松昌英部長は、国内金利の上昇を背景に外債を減らして国内債に回帰する点について、分散投資の面から「必ずしもそうではない」と説明。ただ、国債や社債も含めて円金利資産に「投資しやすくなったのは事実」と付け加えた。
日本は海外投資家として最大の米国債保有国で、オーストラリア債については全体の10%近くを保有する。株式はシンガポールからオランダ、米国に至るまで数千億ドル相当を有し、市場の1%から2%程度を握っている。投資対象は暗号資産(仮想通貨)や欧州で大規模な損失が発生した高リスク債券にまで及び、日本発の資金動向がもたらす影響は極めて大きい。
特に代表的な例として、農林中央金庫の海外投資が挙げられる。国際金融市場における国内最大規模の機関投資家の一つである農林中金では、米国と欧州の国債が約60兆円相当の有価証券ポートフォリオでそれなりの部分を占める。現在は、金利の読みが外れて採算が悪化した米欧国債およそ10兆円相当の売却を進める過程にある。
また、島根・鳥取の両県を地盤とする山陰合同銀行も、米国債を売却して日本国債の保有を増やす方針にある。
今年8月5日には、日本の金利先高観と米経済の減速懸念を引き金に、世界中のヘッジファンドや投機的な海外投資家が一斉にキャリートレードの巻き戻しを活発化させた。市場にとって悪夢のようなシナリオは、混乱がさらに極端な形で再発することだろう。当時は日経平均株価が1987年以来の下落率となり、ウォール街の株価恐怖指数は急騰し、円高が進行。避難先である金さえも売られた。
サクソ・マーケッツのグローバル市場ストラテジスト、チャル・チャナナ氏は、「8月はレパトリエーション(自国への資金回帰)のトレンドを垣間見る良い機会になった」と振り返る。
JPモルガン・チェースは、8月の市場混乱を受けて、低金利の通貨で資金を調達した世界のキャリートレードについて4分の3程度が解消されたと試算。日銀の政策金利である無担保コール翌日物金利が0.25%程度となる中、円は引き続き低金利通貨の基準を満たしているが、それが変化するにつれて、日本の投資家が国内に資金を還流させるインセンティブは高まるだろう。