「天下り」再び批判 何が問題なのか? 坂東太郎のよく分かる時事用語
2017年1月、文部科学省の前高等教育局長が早稲田大学へ教授として再就職した過程が国家公務員法に違反する「天下り」であると内閣府の再就職等監視委員会が認定しました。 文科省は「組織的あっせん」を指摘されて事務方トップの前川喜平事務次官が引責辞任。教授も職を退きました。安倍首相はすべての府省庁に実態調査を指示。文科省は3月末までの最終報告へ向け内部調査を進めています。 そこで、「天下り」とはどういうものか。何が問題なのか。あらためて考えてみました。
●そもそも「天下り」とは?
ニュースなどで報じられる「天下り」とは、役人、とりわけ国家公務員試験の総合職(旧1種、旧上級)に合格したエリート公務員(官僚)が、役所で監督したり担当したりしてきた企業や団体に再就職する行為を指すケースで主に使用します。府省(府は内閣府)を自主的に辞めて自ら再就職したり、まったく関係ない分野へ転職したりするのは「天下り」と呼ばないのが慣行です。 中央省庁には「早期退職」の慣例が根強いため、居場所を失った官僚を民間に引き取ってもらうというのが大ざっぱな姿です。問題となった文部科学省は、大学の設置を認可したり、私学助成金(私立大学等経常費補助金)を交付する団体を所管したりしているので引き受ける大学側にもメリットがあります。ちなみに前局長の大学でのお仕事は、早大WEBサイトによると「文部科学省等の各種事業関係に関する連絡調整等への関与(大学への助言)を行う」。潔いほど露骨ですね。 かつての「天下り天国」の時代で象徴的なケースを、2009年2月の衆議院予算委員会で民主党(当時)の細野豪志議員が挙げています。例とされた元官僚は 財団法人理事長→特殊法人会長→社団法人理事長→財団法人理事長→財団法人理事長→社団法人理事長 と6回も「渡り(鳥)」、最後を除いて高額の報酬や退職金を受け取っていました。「渡り」先はすべてこの人物の出身省庁と縁を感じるところばかりです。ある公益法人を3、4年勤めては退職金をもらい、次へと飛来するさまが渡り鳥と似ているので「渡り」と言い表すのです。