ソニーがKADOKAWAの筆頭株主として狙う「IP強化」とは? 投資家が注目すべき3つのポイント
12月19日、ソニーグループ(6758)が総合メディア企業のKADOKAWA(9468)と資本業務提携を結び、およそ10%の株式を取得し、筆頭株主になると発表しました。かねてより両社は買収する方向で協議を進めていると報じられ、エンターテインメント業界に衝撃が走っています。 出版、アニメ、ゲーム、教育事業まで幅広く展開するKADOKAWAは、日本を代表するIP(知的財産)の供給源として知られる存在。このニュースを受けて、KADOKAWAの株価は急騰し、連日ストップ高を記録するなど、投資家からの注目が一気に集まっています。 この背景には、世界的なエンタメビジネスの潮流があり、映画、音楽、ゲーム、アニメ、書籍など、あらゆるメディアコンテンツが相互接続し、IPの価値がこれまで以上に高まっています。
ソニーが次に狙う戦略とは?
かつてのソニーは「ウォークマン」や「ブラビア」などハードウェア主導で世界を席巻した家電メーカーという印象が強かったかもしれません。しかし、近年はエンターテインメント事業が収益の中核となりつつあります。プレイステーション(PS)プラットフォームを軸としたゲームビジネス、映画製作、音楽出版、アニメ配信など、IPが軸となるビジネスモデルへと着実にシフトしているのです。 一方のKADOKAWAはライトノベルやマンガ、アニメ、ゲームへと多面的に展開できる原作IPを数多く抱え、「IPの宝庫」といえる存在です。もしもソニーがKADOKAWAを手中に収めれば、コンテンツの企画からグローバルな展開まで、一貫したビジネスモデルをより強固にすることが可能になることが期待されます。 そこで今回は、この買収観測報道を踏まえ、投資家が特に注目すべき3つのポイントを整理いたします。さらに、日本のエンターテインメント業界が迎える「IP戦国時代」の行方についても考察していきます。
ポイント1:IPバリューチェーンの垂直統合
まず注目したいのは、「IPバリューチェーンの垂直統合」です。従来、コンテンツビジネスは「原作の創出」「編集や製作」「配信・販売」といったプロセスがそれぞれ別個の企業によって行われてきました。しかし、グローバル規模でのIP競争が激化する中で、プラットフォーマーやコンテンツホルダーは、IP創出から二次展開、そして世界市場への拡販までを一手に担う「フルスタック」な経営モデルを目指す傾向が強まっています。 ソニーはゲーム事業の成功や傘下の海外アニメ配信プラットフォーム「クランチロール」を通じて、世界中のユーザーへ自社コンテンツを直接届ける仕組みを充実させてきました。しかし、その源泉となる「原作IPを絶えず生み出す力」については、まだ他社頼みな部分が少なからず残っています。 なぜならヒットゲームシリーズこそ多く抱えますが、出版やライトノベル、マンガなど「原作プール」を自前で持つことは簡単ではないからです。仮にKADOKAWA買収が実現すれば、この弱点が一気に補強されます。 KADOKAWAは『角川文庫』『電撃文庫』『MF文庫J』といった有力レーベルを持ち、今年の7月には『推しの子』のアニメ制作会社を買収するなどなど、大手出版社ならではのヒット作を生み出す力があります。こうした強力な原作供給源がソニー傘下に収まれば、企画段階から世界展開まで、一貫したIP戦略を構築しやすくなることが期待されます。