ソニーがKADOKAWAの筆頭株主として狙う「IP強化」とは? 投資家が注目すべき3つのポイント
ポイント2:グローバル市場でのシナジー創出
第二のポイントは「グローバル市場でのシナジー効果」です。エンターテインメント市場はもはや国内完結ではなく、国境を軽々と越えていきます。アニメをはじめとする日本発のコンテンツは、北米や欧州でも幅広いファン層を獲得しています。このような状況下で、強力なIPは世界中で通用する武器となります。 ソニーはすでに映画、音楽、ゲームといった多面的なグローバル展開に成功しており、現地での配信インフラや提携先企業を多数確保しています。そこへKADOKAWAの原作IPが加わることで「日本発IPを世界規模で育成・展開する理想的なエコシステム」の構築が期待されます。 具体的には、ライトノベルやマンガで生まれた作品を、ソニー傘下のアニメスタジオやゲーム開発チームがマルチメディア展開し、それをグローバルな配信網、PSネットワーク、さらには映画化して海外の劇場へと届けるといった統合ビジネスが考えられます。 また海外の投資家やグローバルファンドから見ても、こうした垂直統合モデルは評価されやすいと考えられます。なぜならディズニーやNetflixなどの海外メディア大手は、自社IPと配信基盤を独占的に抱え込む戦略を強化しています。ソニーがKADOKAWAを得て強固なIP生産ラインを社内に抱えれば、これらの海外メディアジャイアントに対抗し得る存在感を確立できるはずです。
ポイント3:非中核事業の扱いとリスクマネジメント
第三のポイントは、「非中核事業の扱いとリスクマネジメント」です。KADOKAWAは出版・映像・ゲーム・アニメといったメディア関連以外にも、ドワンゴとの統合による教育事業(N高、S高)や、ニコニコ動画など独自色の強いサービスを有しています。もしもソニーグループに加わった場合、これら非中核的な事業の整理や再編が行われる可能性があります。 なぜなら、ソニーはグループ全体の収益性やシナジーを重視するため、シナジー効果の薄い事業には容赦なくメスを入れることが予想されるからです。また、KADOKAWA側が過去に経験したサイバー攻撃による情報流出事件などのリスク管理も求められるでしょう。仮にソニーの買収によりKADOKAWAの上場廃止(非上場化)が実現した場合、一般株主にとっては買収時点での株式売却や、上場廃止後の対応が課題として残っています。 今後、非上場子会社となったKADOKAWAが、どの程度独立性を保ちながらクリエイティビティを発揮できるのかは不透明です。経営の自由度が低下する可能性はある一方、豊富な資本とグローバルネットワークを活用してIPをさらなる高みへ引き上げるチャンスでもあります。 投資家としては、こうした買収後の事業整理とリスク対応に関するシナリオも頭に入れておく必要があるでしょう。