パナマ文書で注目 「オフショア取引」と「タックスヘイブン」とは?
78か国で活動する370人のジャーナリストがデータの分析や調査に参加し、全容が解明されるまでには数年を要するとも言われている「パナマ文書」問題。その衝撃は今月6日の記事でも紹介しましたが、アイスランドではすでに首相の辞任にまで発展。他の国でも現役の大統領や首相、国際的な企業に対する風当たりが強まっています。 【写真】世界最大級のリーク「パナマ文書」とは?(4月6日)
通常は税率が20%以下の地域がオフショア
パナマ文書で大きく取り上げられた「オフショア取引」と「タックスヘイブン(租税回避地)」の存在。 所得税や法人税が極めて低い国や地域に法人を設立することを、自国から離れた「沖合」を意味するオフショア取引といいます。ネガティブなイメージが先行するオフショア取引ですが、海外には国内情勢の不安定さが原因で資産を安全に管理することができない国もあり、財産の保全や投資の分散化でもオフショア法人が利用されます。 今回は、それらがどういったもので、具体的に何が行われているのか、専門家へのインタビューを中心に紹介します。海外の投資ファンドでの勤務が長く、現在は東京を拠点にする金融関係者にお話を伺いました。 ――オフショア取引とタックスヘイブン、この二つの違いや定義を理解するのも大変だが、タックスヘイブンは租税回避地で、オフショア取引の行われている場所の多くがタックスヘイブンという認識でいいか? 「本国以外の場所で行われている取引を、総じてオフショアと呼びます。タックスヘイブンは、通常は税率が20パーセント以下の地域を総じてそう呼びます。例えば、観光業などが盛んで、税率をそこまでアップさせなくても問題のない国がタックスヘイブンになる傾向がありましたが、タックスヘイブンそのものが収益の多くを占め、タックスヘイブンやオフショア取引に依存する国も存在します。イギリスも間もなく法人税が20パーセント以下に引き下げられ、これまで使われてきたタックスヘイブンの定義も少し変わるような気もしますが、基本的には税率が20パーセント以下、もしくはゼロに近い国々を指します。カリブ海だけではなく、アジアではシンガポールや香港も有名ですね。本国以外の場所で行うオフショア取引に、租税回避地のタックスヘイブンが使われることは珍しくありません」 ――海外でのオフショア取引といえば、どうしても富裕層や、巨大企業のイメージが先行するが、一般人でもオフショア取引を行うことは可能なのか?いくらくらいの資産を持っていたら、オフショア取引のメリットがあるのか? 「英領ヴァージン諸島やケイマン諸島といった、典型的なタックスヘイブンに、法人もしくは個人名義で口座を開設し、お金を預けている人は結構いると思います。その際に用いられるのがノミニー制度で(補足:法人の役員や株主を第三者名義で登録できる制度)、表向きはオフショア取引を行っている現地の人間が会社の代表になっていたりするものの、社会的に名前の通った人物が実際のオーナーで、経済的利益を手にしているというケースは少なくないと思います。ただ、ノミニーに支払うお金が年に100~200万円はかかると思いますので、それらを差し引いても、メリットを享受できる個人や法人になってくるのではないでしょうか?」