大麻取締法改正案施行によって何が変わるのか
医療における大麻成分の施用について
医療における大麻成分の施用について 今回の法改正で特筆すべき点の一つは、大麻由来の医薬品が医療目的で施用できる道が開かれたことです。 旧法である大麻取締法では、大麻を医薬品として利用すること自体が禁じられていましたが、今回の改正により、特定の条件下で医薬品としての活用が可能になりました。 例えば、先進国で既に承認されているエピディオレックス(大麻由来の抗てんかん薬)は、日本国内でも治験が進行中です。 また、新法の枠組みにより、精神作用を有するTHC(テトラヒドロカンナビノール)についても、治験を経て医薬品として認められれば施用が可能となります。 麻薬としての正規用途は、エピディオレックスのように薬事承認を受けた医薬品として利用されることを目指しています。 これは、医療現場で安全かつ効果的に使用されるための厳しい基準をクリアする必要があるという意味です。 一方で、薬事承認に至らない段階の製品(THCV等のマイナーカンナビノイドを含むブロードスペクトラムやフルスペクトラム製品など)についても、治験や特定臨床研究の枠組みを活用することで、限定的に使用できる道が開かれています。 この枠組みは、患者さんのQOL(生活の質)向上を目的とした安全性の高い医療利用を進めるために設けられたものです。 患者さんには簡単ではないですが、THCを含めてアクセスする方法は残されています。 今後は、限度値を超えるTHCを含む製品については、麻薬として厚労大臣の薬事承認を得たものを使用する道、治験や特定臨床研究の中で使用する道がありますが、いずれも、麻薬施用者免許を持つ医師が施用する方法です。 実現可能性は未知数ですが、食品としてではなく、THCを含む麻薬成分を含む製品については、以上のような適正な医療の枠組みで今後は施用可能となり、これは業界全体の前進であると考えます。 食品市場と医療用途の狭間 私自身、以前から日本の大麻政策、特に精神作用を有する成分の取り扱いについては、医療目的を出発点として着実に進めるべきだと主張してきました。 今回の改正は、与野党の議員、患者会、医療機関、そして厚生労働省が連携した結果であり、この改正を実現してくださったすべての関係者に深く感謝申し上げます。 特に、患者の皆様や患者会の皆様の声が、この法改正の機運を高める重要な役割を果たしたと感じています。 今回のタイミングでの改正は、さまざまな条件が整った絶妙な時期だったと言えるでしょう。 今後も医療分野を起点に、日本が国際的な医療利用の潮流に追いつき、より多くの患者が適切な治療を受けられる社会を目指していきたいと考えています。 一方で、食品としての利用を前提にしたTHC規制値の引き上げを求める声が一部で見られますが、これは法的な枠組み上、現実的ではありません。 食品としてCBD製品をはじめカンナビノイド製品を「効果がある」と標榜することは、薬機法に違反する可能性があるほか、CBDが医薬品として承認された際に「効果がある」という理由で「専ら医薬品」に分類されるリスクを伴います。 こうした状況は、CBDやカンナビノイド製品が食品市場から排除される結果を招く可能性があり、本末転倒と言わざるを得ません。 また、医療の道が狭いながらも開かれた今、事業者が患者さんを利用し、カンナビノイドに効果があると標榜して慈善活動を装った営業活動を行うことは許されません。こうした行為は業界全体の信頼性を損ねるだけでなく、規制強化を招く一因となる可能性があります。「必要であれば医療用途として進めるべき」というのが新法の要請であり、この方向性に沿った取り組みが今後の業界に求められます。 医療の枠組みで適切に活用し、信頼性の高い市場を築いていくことが、業界全体の持続的な発展につながると確信しています。