「得意」と「やりたい」どっちを仕事に選ぶ? 横浜美術館の広報が語る「キャリアの拓き方」
横浜市芸術文化振興財団の選考に通過し、アート系の仕事に関わるという目標を叶えた山本氏は、現在は横浜美術館の広報を担当している。具体的な仕事内容は、メディア対応やプレスリリース作成、SNS運用などの広報や、Webサイトの運用や分析などを手がける。これまでの山本氏の経験をフルに生かせる仕事と言っていいだろう。
3年間の休館を経て、リニューアルオープンした横浜美術館
■ [ルール4] 自分が関わるものは、現状維持ではなく可能な限りよい形に 山本氏が横浜市芸術文化振興財団で手がけた仕事の中で印象深かったのは、「横浜トリエンナーレ」を担当したことだ。横浜トリエンナーレとは、横浜市で3年に一度開催する現代アートの国際展だ。国際的に活躍するアーティストの作品を展示するほか、新進のアーティストも広く紹介し、世界最新の現代アートの動向を提示するイベントでもある。現在は、第8回展「野草:いま、ここで生きてる」が2024年6月9日(日)まで開催されており、山本氏がはじめて担当したのは2011年に開催された第4回展だった。 ┌────────── 第3回展までは別の組織が主催していたこともあり、私が担当するときには過去展の紙資料もデータも完全に引き継がれてはいませんでした。4回目の開催なのにゼロスタートのような状況だったんです。しかも、横浜トリエンナーレの現場はさまざまなプロフェッショナルが集められて、会期が終わればほとんどのスタッフが解散する組織です。コアメンバーとして次回展準備のために残った身としては、その時点までに蓄積してきた経験や情報をまとめて次へつなげて行かなくてはと思いました(山本氏) └────────── そこで、山本氏は事業に関するあらゆるマニュアルやデータ集を作ることにした。これまで散逸していたIDやパスワードなどの基本情報はもちろん、決定事項については「誰に話を聞いて、どういった判断のもとに行われたか」という経緯など知り得たすべての情報をまとめた。 次回展を成功させるために必要であるのはもちろんだが、いずれ後任や将来的な担当者にとっても有益な情報になると考えたからだ。このように「課題がある場合は、現状維持のままではなく可能な限り良い形にすることを心がけている」と山本氏は語る。 ┌────────── どんな業務でも現状をより良くできる選択肢が他にもあるのでは…という視点で仕事をしています。そう考えるのは、デザイン界の巨匠であるテレンス・コンラン卿の『デザインを通して社会をより良くして行きたい』という言葉に影響を受けています。デザイン業務に限らず、情報を整理し、課題を掘り起こしてそれを解決していくデザイン的な思考は、すべての仕事において業務を改善していくことができる方法の1つだと考えています(山本氏) └────────── 山本氏が担当する横浜美術館は3年間の休館を終えて、2024年3月にリニューアルオープンしたばかりだ。言うまでもなく、リニューアルも改善の一つだ。今回のリニューアルにはどのような狙いがあるのだろうか。