「得意」と「やりたい」どっちを仕事に選ぶ? 横浜美術館の広報が語る「キャリアの拓き方」
お酒が弱いのに、ワイン輸入商社へ
■ [ルール3] あえて苦手なことにも挑戦してみる 山本氏が美術館の仕事と並行して、生活の基盤として選んだ仕事はワインを取り扱う輸入商社でのインハウスデザイナーだ。残業はあまり多くなく、職場は表参道の近辺で六本木の美術館にも近い。そういった条件面で選んだ仕事だったが、山本氏にはひとつ気になることがあった。 ┌────────── 実は、私はお酒が弱くほとんど飲めないんです。でも、ワインを扱う会社なので社員はお酒が好きな人ばかり。でもいい機会なので、なぜみんながこんなにお酒が好きなのか、お酒についても勉強しようと思いました(山本氏) └────────── そんな山本氏の学ぶ姿勢は周囲にも伝わる。同僚や先輩たちが「おいしいから一口飲んでみたら」とさまざまなワインを差し出してくれたり、「あのレストランに行こう」と誘われたりするようになり、オフでも一緒に遊ぶほど親しくなった。そんな交流を通じて、お酒がコミュニケーションツールとして非常に重要な役割を果たすことにも気付いた。輸入商社で働いた経験は、他にも山本氏にとって多くの学びがあった。 ┌────────── 当初はBtoBのWebサイトのディレクションやデザイン担当だったのですが、それ以外にもさまざまな仕事を経験しました。顧客向けのワインの試飲会で使うツールやワインラベルのデザインなども担当しました。マーケティング部に所属していたこともあり、ちょうど会社のCI(コーポレートアイデンティティ)を刷新する時期でもあったので、ロゴや名刺などのコミュニケーションツールのリニューアルプロジェクトも任せていただきました(山本氏) └────────── 山本氏は輸入商社で充実した日々を送りつつ、大学の科目履修生となって学芸員の資格を取ったり、現代美術アーティストのアシスタント業務などにも携わったりして、アートの道に進むための活動も引き続き行っていた。 楽しく専門商社で働きはじめてから4年近くが経ったある日、山本氏は友人から現在働いている横浜市芸術文化振興財団の募集があることを教えてもらう。「アートに関わる仕事がしたい」と話していたのを友人が覚えていたのだ。山本氏は面接の場でどのようなアピールをしたのだろうか。 ┌────────── 美術館などのアート系組織には、自分が実際に作品制作を経験している人は実はそんなに多くないんです。そのため、作品制作をしていた経験があること、アーティストのアシスタントや美術館スタッフの経験があること、さまざまな立場の多角的な視点から業務にあたれることなどをアピールしました(山本氏) └──────────