「得意」と「やりたい」どっちを仕事に選ぶ? 横浜美術館の広報が語る「キャリアの拓き方」
デザイン事務所に入社して働き始めたものの、雑誌を刊行するまでには予想以上に時間がかかった。そのうちに山本氏はデザインよりも、自分が中学生の頃から好きだったアートに関わる仕事がしたいと思い始める。
■ [ルール2] 「得意」と「やりたいこと」のバランスを取りながら、キャリアを拓く 若手時代の山本氏はキャリアの方向性について悩み続けてきた。経験やスキルのあるデザインの仕事を続けていくのか、それとも純粋に好きという気持ちに従ってアートに関わる仕事に挑戦するのか。その答えは、山本氏が動き続ける中で徐々に見えてきた。 ┌────────── 私は展覧会の図録がとても好きなんです。紙質や判型がさまざまで特殊印刷されたものもあり特別感があります。そこで、自分の好きな図録をたくさんデザインしているデザイナーさんのもとで働きたいと考え、自分の作品を送りました。すると、連絡がきてお会いでき、作品に対するアドバイスをもらいました(山本氏) └────────── デザイナーは「君の力量を見たところ、今は雇うことができない、もっと勉強してからまたおいで」と言った。そして、参考になればと自身が手がけた図録や展覧会チラシなど多くの作品を見せてくれたのだという。 ┌────────── 雇えないと言われたことはショックでした。エディトリアルデザイン専門の基礎がない自分は、この方のようなデザイナーになるのは難しいだろうとも思いました。でも、自分がデザインをすることよりも、このデザイナーさんが手がけたものを私はもっともっと見たい。それなら、悩んでいたもう一方のアートの世界に入って、この人に仕事を依頼する側になればいいんじゃないかと、そこで気持ちがはっきりしたんです(山本氏) └──────────
アートに関連するキャリアを模索しようと決めた山本氏が見つけたのは、六本木にある美術館で月に数回サポートする仕事だ。採用に受かったものの、月に数回の勤務とはいえ、働いていたデザイン事務所は勤務時間が長いので並行することが難しい。そこでデザインのスキルを活かした残業が少ない別の仕事をしながら美術館で働こうと山本氏は考えた。