大卒2年目で二桁得点の東京V木村勇大、飛躍につなげた昨季の苦い経験「今年はそこで踏ん張って…」
[9.22 J1リーグ第31節 東京V 2-0 鳥栖 味スタ] 東京ヴェルディFW木村勇大はプロ2年目の今季、期限付き移籍元の京都サンガF.C戦を除くJ1リーグ戦全30試合に出場し、キャリアハイ10ゴールを記録するブレイクの年を迎えている。今節の鳥栖戦もゴールこそなかったが、持ち味である強引な持ち上がりで先制点につながるFKを獲得。夏場に味わったスタメン落ちの屈辱も経て、着実な成長を感じているようだ。 【写真】「スタイル抜群」「目のやり場に困る」“勝利の女神”のアウェー遠征に反響 大阪桐蔭高、関西学院大出身の木村は2022年、大学4年時に特別指定選手として京都でJ1デビュー。先発2試合を含む7試合の出場実績を引っさげ、昨季から正式にプロ選手としての歩みをスタートさせた。 ところが京都での前半戦は試練を味わった。開幕節・鹿島戦では左ウイング起用でさっそく先発入りを果たし、期待の大きさを感じさせたが、その後は出場機会が減少。7試合で0ゴール0アシストに終わり、夏に当時J2だったツエーゲン金沢への期限付き移籍を決断した。だが、そこでも残した数字は10試合1ゴール。1年目はプロの壁に苦しむままに終わった。 それでも今季、J1昇格組の東京Vで真価を示した。開幕スタメンで横浜FM相手に健闘すると、第2節・浦和戦、第3節・C大阪戦で2戦連続ゴール。決してチャンスが多くはない中でも結果を残し続け、ここまで通算10ゴールを記録している。木村によると、昨季の苦い経験が大きな転機になっていたという。 「去年はなかなか自分のやりたいポジションをできず、なかなか難しい状況で、金沢でもうまくいかず、これはまずいなと思った。『選手として死ぬんかな』と、それくらいの思いを持って今年来て、守備の部分をすごく求められる中で成長していると思う。それと同時に自分が持っている力をやっと出せてきたと思う。試合に出ることでいい方向に変わっているので、自分の努力もそうだけど、このチームで試合に出られて、勝ててということでいい循環になっていると思う」 また夏場に差し掛かった頃には3試合のスタメン落ちも経験したが、その時期も自身の成長を実感できる機会になったようだ。 「最初からずっと出してもらっていて、一時期出られていない時は慢心じゃないけど、やれているという感覚がある中、攻撃のところばかりに目が行っていた。このチームで求められている守備とかがないがしろになっている自分がいたと思う。いったん外されて、去年は京都で崩れてしまった。開幕スタメンに入ったけど、そこでうまくいかなくて、それから自分の中で落ちていってしまった。去年はそういう経験をしたので、今年はそこで踏ん張って練習でしっかりやって、またピッチに戻してもらって、結果を残してという流れを作ることができた。そこが一番大きな成長ができた部分だと思う」 そうした日々を経ながら数多くの試合経験を重ねることで、J1守備陣との駆け引きもぐんぐんと成長中。「細かい判断はまだまだ。行けるところでも味方を使ってしまったり、チームプレーに徹してしまう弱い自分もいる。行くところと行かないところの使い分けと、行けるところと行けないところの判断を試合の中で明確にしていきたい」と判断面では課題を自覚するが、強引にでも前へと仕掛ける武器はJ1カテゴリの中でも異質な存在感を放っている。 「いまは特に1トップなので自分が前で収めて自分が何とかしないと前進できない。今日は相手が3バックでマッチアップするので、俺が負けなかったらチームの流れも持っていける。そこで収めるだけじゃなく、強引にでも前に行くのが俺の特徴。日本にはそんなにいないタイプだと思うので、そこはこだわっていきたい」 世代最年長として出場資格があったパリ五輪の出場は逃す形となったが、次の目標はA代表。現在のエースを担うFW上田綺世、着実に国際Aマッチの経験を重ねるFW小川航基のほか、カタールW杯メンバーのFW町野修斗、同じパリ世代のFW細谷真大らに割って入りたいところだ。 そのために求められるのはゴールという数字。「今年急にぽっと出て活躍しているだけなので、これを続けていければ。いまは代表に選ばれるとなったら海外に行かないとダメだし、もっとJで結果を残して尖った選手になって、海外で結果を残したら代表が見えてくると思う。やっぱり数字なので。プレーを覚えている人もいるけど、フラットに見た時に目に入るのは数字なので、数字にこだわって頑張りたい」とゴールへの感覚を研ぎ澄ませながら残りシーズンを戦っていく構えだ。