選手たちから主体的に良い「声」が出るためには?|高校野球の元監督が少年野球の「お父さんコーチ」になってみた
高校野球の元監督が「お父さんコーチ」になって思った、少年野球のあんなことやこんなこと。日々、子ども達と向き合い、奮闘されている指導者の皆さんに向けた、神奈川県立川和高校野球部の元監督、伊豆原真人さんのコラムです。 【動画】全員ピッチャーになろう!「全員ピッチャードリル」 指導者から「声を出せ!」と言われると、 「バッチこい!」「うぇーい!」「さぁいこー!」 のような一言で終わってその後が続かない。 でも、試合や練習が終わって子どもたち同士だとよく騒ぐ、遊ぶ、話す。 そんな悩みを持つチームは多いです。 学童野球では攻撃中に応援歌(?)を歌うチームが多いように思いますが、声の代わりに雰囲気を作るためというのも理由のひとつなのだろうと推測できます。 選手個々の性格などもあり、様々な考え方があるとは思いますが、私は以下のようなポイントから入ると良いのではないかと考えています。 【1】声を出すには「知識」が必要 【2】試合中に出す声は普段の会話とは全く違う 【3】選手たちは「正解」を言わないといけないと思い込んでいる 【4】プレー中に会話するには「会話する練習」が必要 【5】指導者自身がお手本に 【1】まず、定型語以外の声は場面によって様々変わるため、試合の状況を把握し判断できていなければ指示や問いかけができず、良い声は出せません。 そのためには状況判断が的確で、知識が深い選手ほど声を出せる可能性が高いということになります。 【2】試合中に出る声は考える時間がとても短く、瞬時に反応しなければなりません。 普段の会話は自分のペースで考えて会話でき、レスポンスも自分のペースで考えて返すことができます。慎重な性格の子ほどその傾向が強く、そしてそれは性格的には決して悪いことではありませんが、相手のあるスポーツの試合では自分のペースで、というわけにはいきません。スピードについていく必要があります。 【3】試合に限らずですが、選手たちは常に指導者の考えた正解を言わないといけないという考えが根底にあります。学童野球において、指導者が大人で選手が子どもである以上、どんなに指導者が選手に配慮しても、思ったこと感じたことをそのまま口に出すことができないかもしれません。 その前提で、指導者は子どもたちの話を「傾聴する」スキルが求められると思います。 【4】子どもたちにとって試合中に声を出すというのはマルチタスクなのだと思います。個人の捕る投げる打つを意識しながら、チーム状態や状況判断をすること自体が難易度の高い行動だと思います。 ひとつのことに集中させる練習は多いと思いますが、普段の練習からゲーム性やマルチタスクを意識した練習や、ライフキネティックトレーニングなどを取り入れると効果的で良いと思います。 【5】指導者が率先して子どもたちのお手本として声を出し、マネから入らせることはとても良いと思います。采配を振るう監督は難しいと思いますが、複数のコーチがベンチに入っているならば、子どもたちの声担当のコーチがいるとより良いと思います。 まとめると、 「声を出すには知識が必要」 「声を出す練習はマルチタスクで」 「大人が子どもの声を遮らない環境」 声はチームを鼓舞し、雰囲気を作ります。もちろん様々な考え方がありますが、選手たちから主体的に良い声が出るようになってほしいですね。 【プロフィール】 伊豆原真人。愛知県立瑞陵高校野球部、信州大学野球部で投手としてプレー。大学院卒業後にシステムエンジニアの道へ進むも、28歳で神奈川県教員へ転職。相模大野高校(相模原中等教育学校)監督を経て、2013年から川和高校の野球部監督に就任。2023年からは他校への異動に伴い高校野球の現場を離れた。担当教科は数学。 X(https://twitter.com/izuharabaseball) Instagram(https://www.instagram.com/masatoizuhara/)
BASEBALL KING