フィギュア団体で鍵山と樋口が衝撃の五輪デビューを飾れた理由とは…見えてきた初のメダル可能性
昨年イタリア杯でマークした197.49の自己ベストを更新する208.94点を獲得。平昌五輪6位で世界選手権の表彰台に上がるなど実績のあるビンセント・ジョウ(21、米国)を上回るFS1位で日本が3位をキープする10ポイントをもたらした。 「初めての200点台だったので、うれしかった気持ちと、チームのみんなと一緒に味わうことができて、これが五輪の団体戦なんだなってことを感じることができてよかった。五輪という舞台でなにかしら成長した自分を見せたいというのと、すべてをここでぶつけるつもりで練習してきた。80%くらい出し切れた」 堂々たる18歳である。 中庭氏は、「日本にとって大きいポイントだったし、200点台を出したことは、五輪初出場でありながら、本番の舞台で実績を作り個人戦に影響を与える大きな点数になった。メダルの可能性が高まる演技だったと思います」と評価した。 「公式練習の映像を見る限り、4回転ループには苦労していた印象があり成功率は高くなかったんだと思います。回転が抜けることが一番怖かったのですが、着氷は少し乱れたもののしっかりと軸に入って基礎点をもらえる回転を作りました。全日本選手権の後の約1か月間ほどで、4回転をひとつ増やして、実戦に投入、基礎点を約5点上げるプログラムを五輪の大舞台でやってのけたのは凄いこと。負荷のかかる新しい4回転を前半に入れることで、後半への影響が心配されましたが、その後半でも4回転を入れた3連続ジャンプを成功させました。個人戦への自信にもなったと思います」 中庭氏は、五輪デビュー戦で驚愕のスコアを叩き出したバックボーンに父の存在があるのではないか、と見る。 「本番での集中力の高さは、お父さん譲りじゃないでしょうか。五輪を知っている経験者が近くにいることが最高のサポートだったと思います」 鍵山の何がどう凄いのか。 中庭氏は、鍵山の長所をこう解説した。 「ジャンプの質が高いんです。最近の4回転を軽々成功させるトップスケーターに共通していることですが、最初に回転を作るのが上手く、効率よく飛ぶ。それを生んでいるのが、膝などの下半身の柔らかさです。柔らかく、それでいてバネのある踏切の動きから、衝撃を吸収するような着氷で下半身に負荷がかかりにくいためノビノビ感が出て軽々見えます。スケートを滑らせる能力が高く、躍動するような上下動、リズムカルな滑走から生み出されるジャンプだから質は高くなります。世界最高峰のレベルにあると評価してもいいと思います」 メディアは、男子シングルは、3連覇を狙う羽生結弦(27、ANA)と世界選手権3連覇中のネイサン・チェン(22、米国)との一騎打ちになると、予想しているが、団体SPで自己ベストを叩きだした宇野昌磨(24、トヨタ自動車)に加えて、同じく200点台の自己ベストをマークした鍵山も、メダル争いに名乗りを上げることになった。 平昌五輪でのチェンがそうだったように、4回転ジャンプの戦いは、転倒のミスが出ると一気に、“大量失点“につながる危険性があるだけに、ジャッジに演技構成点を認められた18歳の鍵山にもチャンスがある。 「SPもフリーも楽しい気持ちを忘れずに頑張りたい」 団体のFSを自らのシングルへの“最高の前哨戦”にすることにも成功した鍵山に気負いはない。男子シングルのSPは8日だ。 さて2人の五輪デビュー組の活躍で日本に初の団体メダルの可能性が出てきた。 2位の米国に3ポイント差と迫り、4位のカナダと9ポイント差、5位の中国に10ポイント差をつけた。残りはペア、アイスダンスのフリーと女子シングルFSの3種目。1位から順に10、9、8、7と1ポイント差が加わるため、3種目の順位がカナダ、中国を下回るごとにポイント差が縮まる。単純に言えば、3種目で、それぞれ3位差をつけられない限り日本が3位以上をキープすることができる。ペアのSPでは三浦璃来(20)、木原龍一(29、いずれも木下グループ)が自己ベストを更新して4位に食い込み、アイスダンスのリズムダンスでは小松原美里(29)、尊(30、倉敷FSC)のコンビが7位と奮闘した。最終種目の女子FSには、坂本が出場予定。ロシア(ROC)が強敵だが、坂本が2位を確保すればメダルの可能性が高まる。メダルが決まる団体戦の最終日は、今日7日の午前中に始まる。