「役職定年制廃止」は“加速”と断言する理由、シニアが「失うもの」とは
役職定年のない企業に転職するには?
こうした中高年の仕事探しの希望条件からは、役職定年がモチベーションを下げている実態がうかがえる。 役職定年のない企業に転職するために、役職定年制を廃止した大企業を希望するシニアもいるかもしれない。しかし、こうした大企業は社内にシニア社員が多く、新たにシニアを中途採用することが少ないため、求人には出会いにくい。さらに、成果主義・能力主義の人事評価が導入されていることが多く、競争は激しいかもしれない。 一方で、中小企業には役職定年制を導入している会社が少なく、仮にあったとしても「特例」を設ける柔軟な対応が多い。中小企業の方が転職先として現実的かもしれないが、「特例」を認める会社は労働者を守るルールを守らない可能性もあるため、注意が必要だ。
役職定年の意味はなくなる断言理由
役職定年制は今後、どうなるのだろうか。 一部では廃止した役職定年制を復活させたり、類似の制度を設けたりする企業もあるが、筆者は役職定年制が意味を失うと考えている。理由の1つは少子高齢化と働き続ける年齢の上昇であり、70歳まで働くことが一般的になる中で、15年も前から役職を外すことに合理的な意味はない。2つ目は、解雇規制緩和などの雇用流動化の流れであり、解雇のハードルが下がれば、役職定年制を使って自主退職を促す必要がなくなる。 役職定年というきっかけがなければキャリアを見つめ直す機会がない人もいるため、役職定年制がなくなると準備がゼロのままシニア転職に突入して不幸になるケースも危惧している。役職定年制の有無にかかわらず、長く働く覚悟と計画的なキャリアの構築が、今の時代には不可欠だろう。
執筆:シニアジョブ 代表取締役 中島 康恵