わずかな熱エネルギー、電気に変換…九大が「有機熱電素子」開発
九州大学の安達千波矢教授と近藤駿大学院生(研究当時)、九州先端科学技術研究所の八尋正幸グループ長らは、わずかな熱エネルギーを電気に変える有機熱電素子を開発した。フォノン(音子)で有機分子を励起して電子と正孔を作る。現在の最大出力は1平方センチメートル当たり94ナノワット(ナノは10億分の1)とわずかだが、新しい発電原理になる。 銅フタロシアニン(CuPC)とCuPCをフッ素化したF16CuPCで界面を作り、ここにフォノンを当てて励起し、電子と正孔を分ける。電子は有機分子のフラーレンやBCPを経由してアルミニウム電極、正孔は酸化インジウムスズ(ITO)電極で回収して電位差を得る。 試作した熱電素子の開放電圧は384ミリボルト、最大出力は1平方センチメートル当たり94ナノワットだった。フォノンは分子振動を粒子化した概念で、極わずかな熱エネルギーを表す。熱電素子の活性化エネルギーは20ミリ―60ミリエレクトロンボルトと、室温程度のわずかな熱を電気に変えたことになる。 今後、塗布による大面積化を検討する。微小電力を前提としたセンサーや蓄電媒体を開発できれば、新しいエネルギーシステムになり得る。