〈五輪サッカー〉なぜFIFAやクラブはオーバーエイジに消極的なのか
リオ五輪の開幕まで80日を切った。最終メンバー選考をかねたトゥローン国際も開幕、その初戦で日本はパラグアイに1-2で敗れた。徐々に五輪ムードが高まる中、U‐23日本代表の手倉森誠監督は、「国民の話題で五輪のサッカーとくれば、いまの時期はオーバーエイジ。誰が見ても優先順位はそこでしょう」と、いつものユーモアを交じえた口調で、まだ答えの出ていない問題についてコメントしている。 いわゆる23歳以上のオーバーエイジ枠は3人まで本大会で招集できるが、本来、呼びたかった欧州組のMF本田圭佑(ACミラン)、DF長友佑都(インテル)、MF香川真司(ボルシア・ドルトムント)の名前は候補リストから消えているという。 オーバーエイジを招集するには、所属クラブから承諾を得ることが大前提となる。日本サッカー協会の霜田正浩ナショナルチームダイレクターは、欧州各国を訪問して帰国した4月下旬に、欧州組のオーバーエイジ招集に関してこんな見解を示している。 「クラブと交渉しても勝ち目はない」 つまりは見通しはゼロということ。現地で関係者と情報を交換した結果、前回のロンドン五輪でFIFA(国際サッカー連盟)が各クラブに出した「五輪への選手派遣に応じる義務がある」という趣旨の通達が、今回は見送られる方向であることが判明した。 ゆえに前出の霜田氏の発言となったわけだが、ここで素朴な疑問が残る。FIFAや欧州の各クラブは、なぜオーバーエイジ枠での選手派遣に消極的なのか。五輪におけるオーバーエイジ枠創設までの経緯を振り返ってみれば、「シーズン開幕を直前に控えた大事な時期」以外の理由が見えてくる。 五輪憲章から「アマチュア」の文字が削除されたのは1974年。プロスポーツが盛んになってきた時代の流れが反映されたもので、サッカー競技でも1984年のロサンゼルス大会からプロの出場が解禁された。 もっとも、プロが全面的に解禁されれば、W杯との差別化が図れない。サッカー競技を充実させることで興行収入増を望むIOC(国際オリンピック委員会)と、W杯の権威を守りたいFIFA。両者の利害が真っ向から対立した結果、ロサンゼルス五輪と1988年のソウル五輪は「W杯大陸予選及び本大会に出場した欧州及び南米の選手は出場できない」と規定された。