JR東日本にも運輸省にもナイショで…品川に「新幹線駅」を作りたかった葛西敬之のハチャメチャすぎる「行動」
安倍元首相が国士と賞賛した葛西敬之が死の床についた。政界と密接に関わり、国鉄の民営化や晩年ではリニア事業の推進に心血を注ぎ、日本のインフラに貢献してきた。また、安倍を初めとする政治家たちと親交を深め、10年以上も中心となって日本を「事実上」動かしてきた。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 本連載では、類まれなる愛国者であった葛西敬之の生涯を振り返り、日本を裏で操ってきたフィクサーの知られざる素顔を『国商』(森功著)から一部抜粋して紹介する。 『国商』連載第38回 『政府から3600億円の要求!? …念願の「社長」になった直後に葛西敬之が直面したヤバすぎる「債務問題」』より続く
航空業界への対抗意識
葛西は航空業界に対抗し、東海道新幹線をブラッシュアップした。もっとも新幹線の本数は、大して増えなかった。のぞみ、ひかり、こだまを合わせたすべての東海道新幹線の1日あたり走行数は、のぞみが走り出した92年の276本から95年が271本とほぼ横ばい、2000年になると269本とむしろ減っている。のぞみそのものは増えているが、東海道新幹線全体で見たら、さほど成長していないのである。 理由の一つには、バブル経済の崩壊という不況もある。しかし、この間、IT・ファンドバブルなどの好景気も訪れたので、それだけの原因でもないだろう。 ところが東海道新幹線は低迷期から一転、成長し始める。きっかけは03年の新幹線品川駅の開業である。それもまた、葛西の悲願だった。黒野が続ける。 「これも葛西流ならぬ火砕流でね。国鉄清算事業団の解散と同じ頃のある日、朝日新聞朝刊に『JR東海 品川に新駅建設』という記事が掲載されました。品川新幹線駅を利用する、とあたり前のように書いている。しかし、われわれ運輸当局はまったく関知していませんし、知らされてもいません。したがって葛西サイドから出ている話としか思えませんでした。そもそもJR東海には、東海道新幹線の線路用地こそあるけれども、駅をつくるための土地なんか持っていない。品川駅周辺では、東の用地と清算事業団の遊休地、それから自治体の土地が一部あるだけ。新駅をつくろうとすれば、その土地を使わなければならないはずで、普通なら清算事業団や東、自治体に根回ししてから初めて計画をオープンにするものだけれど、唐突に新聞に出ているわけです。それこそ、流れをつくってしまおうという発想の葛西流なんでしょう。新聞が出ると、葛西さん本人がすぐに私のところに飛んできました。こちらとしても報道されている以上、どうなっているか、説明を受けなければなりませんからね。そして葛西さんは『新幹線の輸送力を高めるためにいかに品川駅が必要か』と縷々訴えるのです」 国民経済全体の観点からすれば、あながち悪い計画ではない。運輸省の黒野はそう考えるようになったと話した。とどのつまり葛西のペースに乗せられていったことになる。