〈日本の再エネ支えるベトナム林業〉森林回復と両立させる意外な経営手法と、背後に潜む問題点
日本の再生可能エネルギーはベトナムなくして成り立たない……。そう記すと、疑問に感じる人も多いだろう。太陽光も風力も水力も地熱も、いずれも日本の大地から得ているではないか、と。 【写真】ベトナム林業の現状 しかし、バイオマス発電はどうだろう。その燃料はどこから調達しているのか。家畜の糞尿などから生成するメタンガスなどはともかく、大半を占める木質バイオマスは日本の山の木を燃料にしているのか。 実はバイオマス燃料の自給率は2割程度に過ぎず、多くを輸入に頼る。この5年間で輸入量は約6倍に膨らんだが、その多くは海外産の木質ペレットやパーム椰子殻(PKS)だ。国産燃料の場合はチップにして燃焼させるが、輸入燃料は木質ペレットが増えつつある。 含水率が低く燃焼効率が高いうえに、形状がそろい輸送や貯蔵がしやすい、さらに自動運転が可能で扱いやすいからだ。そして輸入木質ペレットの55%が、ベトナムからなのである。もし輸入が止まれば、バイオマス発電所の多くが稼働できなくなる。 木質ペレットのほか製紙用チップや木工品などベトナム産に依存するものは多い。それなのに、日本ではベトナムの林業に対する認識が薄い。 このほど地球・人間環境フォーラムがベトナムの木質ペレット生産現場を調査してきた。その報告を参考に、知られざるベトナムの林業現場を紹介しよう。
森林を回復させながら進める林業
これまで日本が木質ペレットを輸入する国にはカナダが目立った。だが、その木質ペレットは天然林を伐採した木で製造されていると指摘され批判の声が高まっている。ただ輸入量としてはベトナムがもっとも多い。 23年で260万トンに達する。では、その原料は何か。筆者は、やはりベトナムも天然林を伐採しているのではないか……と疑っていた。 ところが調査報告から意外な事実を知ることになる。 まずベトナムの森林率は、1940年代に40%以上あったが、戦争で米軍が枯葉剤を散布したことや、戦後復興で建築材料を得るため伐採を進めたこと、そして農地転換などにより90年には27%に低下していた。しかし92年に林業省が森林再生計画を発表して500万ヘクタールの植林を進めた結果、2022年の森林率は約42%まで回復している。 また天然林や防災上重要な山頂周辺は伐採禁止にされていた。森林は急回復していたのである。 主な植林樹種は、北部ではユーカリ類、南部ではアカシア類、山岳地帯ではマツ類とされていたが、近年は政府がアカシア・ハイブリッドに力を入れている。これは非常に成長の早い交配種で、なかには10年で直径20センチ以上に育つものもあるという。この樹種の植林は、東南アジアの熱帯雨林の伐採跡地ではよく見られるが、ユーカリも含めてベトナムから見たら外来種だ。 それでも人工林から原料を得ているのなら森林破壊的ではない。育成林業が成り立っていることになる。そう思ってホッとしたのだが、実は次の驚きが待っていた。