〈日本の再エネ支えるベトナム林業〉森林回復と両立させる意外な経営手法と、背後に潜む問題点
しかも発電のみの場合は、エネルギー効率が20~30%と低く、発電コストの7割が燃料費という経営の内幕が公表されている。燃料価格が高騰したり電力の買取価格が落ちたりすると、経営が逼迫するのは必定だ。 言い換えるとバイオマス発電が成り立つのは、固定価格買い取り制度(FIT)によって電力を高く買い取られるからであり、その期間の20年を過ぎれば事業として成立しない可能性が高いのだ。その時、軒並みバイオマス発電所は操業停止となるかもしれない。
他の木材でも関係は深い
再生可能エネルギーの燃料だけではない。製紙原料となるチップもベトナムからの輸入量は増大している。 とくに広葉樹チップは、ベトナムが7年連続でトップシェア(23年で45.8%)だ。さらにベトナムに工場を持つニトリを初めとして、身近な家具にベトナム製が増えている。中国製とされる家具も、生産地はベトナムが少なくない。 ただしベトナム家具の原料は、5割以上を輸入材に依存しており、なかには日本の木材も含まれる。ベトナムで加工して逆輸入しているのだ。だからメイド・イン・ベトナムと記されたスギやヒノキ製品をホームセンターなどでよく見かけるようになった。その点からは、ベトナムが日本の林業を支えていると言えなくもない。 日本の木材総輸入額のうち15.4%(23年は約2144億円)はベトナムが占める。ベトナム側から見ても、木材関連産業は貴重な外貨獲得源 (2023年で約2兆円)である。相補的関係を築いているからこそ、持続的で環境負荷の少ない関係になるよう努力しなければ、将来に禍根を残すのではないだろうか。
田中淳夫